橋本裕の日記
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2005年09月10日(土) 明日からセブ島

 今日から私の学校は8日間の土日・休日もふくめて16日間の「秋休み」に入る。夏休みが11日早く始まったときにはつらかったが、その見返りとしてこれから一休みできるわけだ。私はこれを利用してフイリピンのセブ島へまるまる15日間、英語の語学研修に行くことにした。

 先週は頭痛に襲われ、そのあげく物が二重に見えるという視覚異常をきたした。そのため今週はほぼ毎日病院に通い、CT、MRIなど様々な検査をした。結論として動脈硬化が進行しているほかは脳に目立った異変はないということだった。相変わらず視覚障害を抱えているが、医師から海外旅行の許可も得たので、予定通り明日の朝、出発することにした。

 この15日間の短期留学に必要な費用は19万円である。往復の航空運賃に加えて、セブ市にある語学学校の学費、ホテル代、三食の食事代、海外旅行の保険料など、すべての費用がふくまれている。物価の安いフイリピンだから可能な額なのだろう。

 旅行に先立って、フイリピンについて何冊か本を読んだ。日記で紹介したフイリピン在住の崎山克人さんの本にも出合い、彼がオーナーだというカオガハン島のことも知った。その島で働いていたという人が、セブ島に住んでいて、takeというハンドル名で興味深いブログを書いている。その中からひとつ紹介しよう。

−−−−−比べない生き方−−−−−−−

 フィリピンのセブ島沖にある、カオハガンという周囲2キロの小さな島で、しばらく過ごしました。日本人の崎山さんが15年ほど前に退職金で購入し、美しい自然環境を守りながら、前から住んでいた人々と静かに暮らしています。まだ経済社会に巻き込まれていない、自給自足に近い平和な島です。

 朝早く、大人や若者たちは、その日に必要なだけの魚介類を海からとってきます。浜辺を散歩していると、子どもたちが海で楽しそうに遊んでいるのを見かけました。みんなとても人なつっこく、やさしい目をしています。

 彼らの家の多くは、日本では小屋と呼びそうになるような、きわめて質素なものです。中に入れてもらいましたが、モノはほとんどありません。でも、とても安らかで幸せそうなのです。

 カオハガンに滞在中、船でセブ島に遊びに行きました。セブはマニラに次いで、フィリピン2番目の都市です。観光地よりも、橋の下のスラム街や、下町の貧しい地域を見てきました。

 セブの子どもたちは、カオハガンと比べて、キツイ目つきをしていることに気がつきました。あれこれ売りつけてくる大人たちも、どこか殺伐としていて、あまり幸せそうには見えません。彼らの持っている家やモノは、カオハガンの人々とそう変わりはないのですが…。

 同じような生活レベルなのに、なぜこんなに雰囲気が違うのだろう、と考えてみました。カオハガンには海しかありませんが、セブには都心や観光地のリッチな生活があります。ひょっとすると、自分たちの貧しさを実感させられるような、比較の対象があるからかもしれません。

 では、彼らがうらやましがる裕福な人々は、本当に幸せなのでしょうか。ビジネスで成功してお金を稼ぎ、いわゆる「勝ち組」に入っているので、プライドや満足感は持っている。日々忙しく仕事をして、さらに上をめざして目標を達成する充実感もあるでしょう。

 しかし、一見何の不満もなさそうな彼らにもまた、逃れられない比較の対象があるのです。自分たちよりも、さらに多くのカネやモノを持っている人たちです。そのギャップにいつも欲求不満を感じながら、毎日競い合う生活を続けているのが実情のようです。

 帰国してサラリーマン生活に戻ると、ストレスをためながらあくせく働く人や、組織の中で出世しようと必死な人、金持ちになる成功法則に夢中な人が目につきます。いずれも、他人と競って比べる生き方のように思えます。カオハガンで見た幸せそうな人々の笑顔を思い出すと、何かが違うような気がします。

 私も30代までは、目標に向けてがむしゃらに頑張るタイプで、それなりの結果も残してきました。それが間違っていたとは言いませんが、達成感や充実感はあっても、心の中はいつも焦っていて、しみじみと小さな幸せを感じる余裕などありませんでした。比べる社会である日本にいても、カオハガン島で知った「比べない生き方」は、今後の人生の大きな財産だと思っています。>

 takeさんがカオガハンに行ったきっかけは、崎山さんの「何もなくて豊かな島」(新潮社)を読んだからだという。カオガハンに客として来て、崎山さんと意気投合し、島で生活する道を選んだ。一冊の本との出会いが、ときとして人の人生を変えることもある。

 さて、私は明日からのセブ島での15日間を、「世界放浪」の第一歩と位置づけている。まずこの第一歩を踏み出すことで、私の前に新しい人生が開けてきそうな予感がしている。

 野ざらしを心に風のしむ身かな  (芭蕉)

http://www.miyazaki-catv.ne.jp/~nakamoto/column16.html


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