橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2005年09月04日(日) 足が4本、妻が二人

 実は現在、私の足は4本である。昨日の朝起きて、スリッパを履こうとして驚いた。いつの間にか自分が4本足の動物になっていたのだ。スリッパも4足そろっていて、私の4本の足がそこに落ち着いた。4本足でトイレに歩いた。

 生殖器も2本あり、そこから流れ出る水流も2本である。水流は裾に行くほど広がっているが、さいわい便器も二箇あったから床が汚れるということはなかった。朝食の時、妻と顔を合わせたが、妻も二人いる。

 二人の妻の距離は私が近づくにつれて小さくなる。充分近づくと、二人の妻は一部重なって見える。それでも鼻が二つあり、目が四つあるので何だか化け物のようだ。食卓の私の前に上にパンが二枚あった。コーヒーもふたつ。食器棚の上の貯金箱も二つ。

 一夜にして私は二倍の財産家になったようだが、どこか変である。それで、片目を閉じてみると、みるみる片方の世界が消えた。妻のお化けは退散し、貯金箱も一つになった。私の足も手も2本になった。こうしてようやく私は正常な日常世界に戻った。

 それでも両目を開くと、また元の木阿弥である。昨日は妻の運転する車で外出したが、道が二股に分かれて見えた。両方向から車が押し寄せてくるので、恐ろしくてならない。思わす目を閉じて「なむあみだぶつ」と唱えた。

 どうしてこのようなことになったのか。5日ほど前からひどい頭痛に悩まされていた。バッファリンを飲んでも治まらない。医者にいって頓服をもらっても治まらないような頭痛である。ちょうど学校が文化際の準備で忙しいときで、この忙しさが頭痛の原因だと思っていた。症状としては両脚に蕁麻疹も出ていたが、とくに熱があるわけではない。頭痛を我慢して毎日学校に行った。

 その頭痛が昨日の朝目覚めると、嘘のように消えていた。そのかわり、世界が二重に見えるようになったわけである。家の中に妻が二人いて、自分の足が4本もあるというのは困るので、さっそく眼帯を買ってきた。これをつければ、一応正常な生活ができる。

 インターネットで「ものが二重に見える」と入れて検索すると、医学的な様々な事例が出てきた。分かったことはこれはかなり深刻な状況だということだ。たとえば脳腫瘍が疑われる。動脈瘤の破裂も考えられる。くも膜下の前兆症状だとも書いてあった。

 つまり、これは生命の維持にかかわることで、足が4本になったといって浮かれている場合ではないようだ。あいにく週末で病院は休みなので、月曜日には病院へ行って、精密な検査をして貰おうと思う。その結果入院や絶対安静を命じられるかもしれないが、そうしたら橋本日記はしばらくお休みということになる。

 あるいは、今日にも脳の中で血管が破れ、おだぶつと言うことになるやもしれぬ。その場合は、今日の日記が最後ということになるだろう。そういう可能性がないでもないので、一応読者の皆さんに事情を説明し、これまでのご厚情に対する感謝と、お別れの挨拶をしておこうと思ったわけだ。

「死」についてはほとんど恐怖感はない。発作が起こり、一気に死ねるものなら、それはそれで本望だと思っている。問題は中途半端に生きながらえることだ。延命治療はしないでほしいと妻に書類で残してある。あくまで尊厳死を望む。

 それから葬式もしないことにしている。仏教は好きだが、坊主がきらいだから仕方がない。死亡通知も出さない。なるべく静かにこの世から消えていきたいと思っている。もっとも死後のことまで注文をつけるのも気が引ける。まあ、遺族が好きにすればよいことだ。

 最悪のことに備えることが私の流儀なので、一応ご挨拶もかねて書いて置いたが、私自身は自分の健康については楽観的である。9月11日には、ぜひフイリピンへ旅立ちたいと思っている。命がある限り、前向きに人生を楽しみたい。

 かたみとて何か残さむ
 春は花夏ほととぎす秋はもみじ葉  (良寛)


橋本裕 |MAILHomePage

My追加