橋本裕の日記
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2005年08月20日(土) こうすれば財政赤字から脱却

 財政をいかに健全化するか。そのためには、現にある700兆円の累積国債をとりあえず<借金とみなさない>で、早急に解消しようと考えないことだ。借金とみなさない理由は、国債を持っているのが日本人だからである。

 その上で、これから発行する国債について、これを漸次削減することを考える。そのためには、思い切った「構造改革」を断行することだ。ただし、私のいう構造改革は小泉流とは随分違っている。

 小泉首相の「痛みをともなう構造改革」は日本を市場原理優先のアメリカ型競争社会にすることである。そうすると、自由な競争の美名のもとに、弱肉強食や弱者切り捨てのリストラが横行し、所得格差は拡大し、一部の富めるものによる経済支配、政治支配がすすむことになる。持てるものと持たざる者の社会的分極化がすすむ。

 しかし、競争によって社会が活性化し、進歩するというのまちがいだ。こうした弱肉強食のダーウイン主義がどういう結果をもたらしたか、その悲惨な例が20世紀の帝国主義戦争である。国内的にはモラルの退廃や、犯罪の増加が考えられる。

 現在のアメリカを見てみればよい。最大の職種が160万人の軍人であり、二番目が100万人の弁護士である。さらにホームレスが800万人、刑務所にいる人が500万人、コカイン中毒者が400万人もいるという。日本をこうした痛みのあふれる国にしてはいけない。

 私は今こそ「競争社会から共生社会へ」というパラダイムの転換が必要だと考えている。これからの日本は20世紀的な産業優先の競争社会ではなく、人間重視の共生社会であるべきである。そして、そうした社会へと扉を開く最初のステップとして「ワークシェアリング」がある。

 現代の日本の失業率は、実質的には20パーセントほどある。つまり、人材が有効に活用されていないことが社会停滞の最大原因である。仕事をみんなで分かち合うことで、この最大の無駄を解消しようというわけだ。

 失業率が20パーセントなら、労働者が20パーセントずつ仕事を減らせばよい。その分、給料は減るが、自由時間は増える。そして、日本のように貯蓄が進んだ先進国では、自由時間の増大は、むしろサービス・社会福祉型の産業を活性化する。

 こうした生活重視のサービス型産業を中心に、内需の増大が生じ、その結果、就業人口が増加し、経済構造の変動が生じるにつれて労働人口の移動が生じるだろう。この段階でむしろ流通や建設、金融といった古い産業の解体や合理化をすすめるのである。

 そうすれば、「痛みや混乱、出血を伴わない構造改革」がスムーズに実現する。つまり、最初に合理化ありではなく、新しい需要の喚起を優先させて、ワークシェアリングである程度産業構造の転換を促した上で、おもむろに旧来産業の合理化・効率化をはかるのである。

 いずれにせよ、生産性の向上を量にもとめる発想をやめて、質にもとめることが大切だ。量的な拡大ではなく、質的な変革をもたらすのである。これによって新しい産業が生まれ、経済が活性化する。同時に税制を改革すれば、財政赤字はなくなる。

 財政赤字は日本の場合は、国から国民への所得の移転だ。700兆円になる国の赤字は、700兆円の貯蓄とつりあっている。貯蓄のあるところ、国の赤字がある。これは経済学の基礎だ。

 アメリカの場合はこれが通用しない。借金の大部分を外国から借りているからだ。したがって利息はそのまま国外への富の逃亡になり、国の貧困化につながる。アメリカはこれを解消しようとしてて、日本政府に郵政民営化を強要した。

 統計では年収が250万円の家計では支出が250万円だ。つまり収入をすべて個人消費にまわしている。これに対して、年収1000万円の家計の場合、消費に回るのは半分の500万円に過ぎない。これでは必然的に需用と供給のミスマッチが生じる。

 お金もちから所得税を取り、利益を上げている大企業から法人税を取り、これを社会消費という形で使って有効需要を創出すればよい。これは金持ちを優遇する小泉流税制改革と反対の流れだが、日本が甦るにはこれが必要である。


橋本裕 |MAILHomePage

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