橋本裕の日記
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2005年08月09日(火) 旅のおわり

 昨日は朝の10時頃、渋谷さんに横手の駅まで送ってもらった。会うのが楽しいぶん、別れはつらいものだ。「たのしかったよ。またきてくれよ」と別れぎわに先に言われてしまった。

「十年後、二十年後、元気だったらまたくるからね。渋谷さんも元気でいるんだよ」というと、「十年後と言わずに・・・」と、あとは言葉にならなかった。

 生憎の雨だった。横手が始発の列車に乗って、しばらくして反対側の窓によると、まだ改札口に渋谷さんがぽつんと立っていた。「もういいよ」といわんばかりに、大きく手をふった。

 帰りは、北上、一ノ関、小牛田、仙台、福島、黒磯、宇都宮、上野、東京で乗り換えた。東京からは「ムーンライトながら」である。木曽川駅についたのが朝の6時半頃だった。東京から乗り換えなしに木曽川までくるのだからすばらしい。

 自宅に帰り、妻と二人で5日ぶりに朝食をとり、それから、NHKの朝の連続ドラマ「ファイト」の4日分の録画を見た。それから新聞を読んだ。郵政民営化法案が参議院で大差で否決された。小泉首相は衆議院を解散し、9月に総選挙を実施するのだという。

 私は新聞を遠ざけた。まだしばらく、旅の余韻を楽しみたい。そのうち頭はいやでも現実に汚染されるだろう。まだしばらく、空想の中で啄木の小学校の古ぼけたオルガンの鍵盤の感触をいとおしみ、そして賢治とともにイギリス海岸を散策し、そしてあの天然の温泉につかっていたいのである。

<刹那々々の感じを愛惜する心が人間にある限り、歌というものは滅びない>
(石川啄木「歌のいろいろ」)


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