橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2005年08月07日(日) 夏油温泉

 昨日は花巻を出てから、岩手県の南西の山間部にある夏油温泉(げとうおんせん)に行った。ここは江戸時代には全国温泉番付では西の紀州本宮温泉に対して東の大関(横綱)とまで言われた、数々の霊妙な名薬を含む南部藩随一の名湯だそうである。

 入浴料を400円はらい、さっそく美しい夏油川の渓流づたいにあるいくつかの露天風呂を、川のせせらぎと鳥の声を聞きながら、はしごすることにした。ここは混浴らしい。ただ、露天風呂にはそれぞれに女性専用の時間帯が設けられていて、その間は男性はそこに入ることができない。

 男性専用時間帯は少ないので、女性はたいていどこにでも入ることができる。しかし、ほとんどの女性は女性専用時間帯の方へ行く。これでは「混浴」とは名前ばかりで、がっかりして怒り出す男性客もいるかも知れない。

 それでも、中には無鉄砲な若い娘たちがいないとも限らない。こういう場所では人の心はときに常軌を外れて開放的になるものだ。そんな期待をいだきながら、私たち男性ばかりが渓流沿いの湯壷に使っていると、浴衣掛けの若い女性が二人、ものおじもせずこちらにやってきた。一人が私の隣の男に声を掛けた。

「先生、私たちはあちらの方にはいりますから」
「あっちはあついよ。こっちはぬるいよ」
「でも、あっちにはいりますから」

 どうやら大学のゼミの研修会らしい。声を掛けられた年輩の男は、女学生たちの指導教官なのだろう。若い女性と一つ湯舟につかって楽しい会話ができれば、今生のよき思い出になるかもしれない。

 そんなおじさん連中の期待もむなしく、二人の女性はしっかり私たちを観察したあげく、勝ち誇った瞳に含みわらいを浮かべながら、浴衣の裾を翻して向こうに行ってしまった。

 露天風呂あだな姉御に冷やかされ


橋本裕 |MAILHomePage

My追加