橋本裕の日記
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| 2005年07月25日(月) |
お金に支配された社会 |
<人間は自由な者として生まれた。だのに、いたるところで鉄鎖につながれている。自分が他人の主人であると思っているような者も、実はそれ以上に奴隷なのだ>(ルソー「社会契約論」)
どうして、自由なはずの人間がいたるところで目に見えない鎖につながれることになるのだろうか。その目に見えない鎖の正体は何だろう。私の答えをいおう。それは<お金>である。
お金というのはほんとうに便利なものだ。しかし、この便利なものに依存しすぎると、かえって災いの種になる。なぜならお金には人を支配する魔力があるからだ。
たとえばお金によって政治家を買収し、自分がさらに富と権力を得ようとする人たちがいる。政治献金などというものもこの一種だろう。
さらにお金を儲けるために、戦争を起こそうとするたちの悪い人たちもいる。たとえばロスチャイルドというユダヤの大財閥がいるが、この一家が財を築いたのはナポレオン戦争によってだと言われている。
アメリカが世界の覇権国家になれたのは、第二次世界大戦によってだし、日本が敗戦の大不況から立ち上がれたのも、朝鮮戦争があったからだ。そしてベトナム戦争や東西の冷戦が日本の高度経済成長におおきな寄与をした。
お金はお金を生む。そしてお金どうしはくっついて、できるだけ大きくなろうという傾向がある。これがお金の法則である。だから、お金は一部の人のところにあつまり、どんどん、他を吸収して大きくなる。
お金持ちはますますお金持ちになり、お金持ちの国はますますお金持ちになる傾向があるのだ。その反対にお金のない人はますます貧乏になる。これを放置するとどうなるだろうう。貧乏な人が怒りだして暴動が起きるかも知れない。
あるいは貧乏な国は恐ろしい兵器を開発してお金持ちの国を脅したり、こっそりお金持ちの国にしのびこんで爆弾をしかけたりする。
お金持ちの人たちはこうした恐怖を取り除くために、警察力や軍隊を強化する。国中に監視カメラをとりつけたり、電話の盗聴をしたりする。しかし、それでも不安だ。
そこでもう少し頭のいいお金持ちの人たちは、自分たちのお金を貧しい人たちに分け与える仕組みをつくった。お金持ちは収入に応じて大目の税金をはらい、ほんとうに貧しいひとは税金を免除するわけだ。
それから、お金持ちの人が死んだら、相続税としてその財産の一部を国に収める制度もつくった。こうしてお金持ちからあつめた税金を使って、貧しい人の生活を保護したり、補助したりする。つまり社会福祉を充実させるわけだ。こうすれば、貧しい人も生活できる。貧しさを追放すれば社会が安定して、お金持ちも安心して暮らせる。
しかし、お金の性質として、ひとつところにあつまり、大きくなろうとする傾向は消えない。しかもお金持ちはもっとお金持ちになりたいばかりだから、本音はあまりお金を出したくないのだ。だから、油断すると、知らないうちに貧富の差がひらく。
お金持ちはお金持ちどうしで競争している。だからよけいに、自分の財産を少なくするようなことはしたくない。そこで、貧乏なのは自己責任だから、自分でどうにかしろと言い出す。自分たちなのは能力もあり、努力もしたからだ。だからお金持ちであって当然だと威張りだすわけだ。
この理屈はおかしい。彼らがお金持ちなのは、多くの場合はたまたまお金持ちの家に生まれたからだ。ほんの少しだけ例外があるが、彼らはこの例外をあたかもほとんどだと思わせようとする。これはお金持ちや彼らのサーバントたちがよく使うトリックだ。
しかしトリックはよくできているので、おおくの人が信じ込んでしまう。これには学校教育の影響が大きい。学校ではしょっちゅうテストを行い、ほんのわずかの違いでも拡大して点数化する。そしてこどもたちを序列化するわけだ。
お金持ちはこの制度を利用して、できる子とできない子を選別し、できる子を優遇する。だから、勉強ができない子は学校を出てからも、いろいろと差別をうける。学校での差別が、社会に出てからの差別をあたりまえだと思わせるわけだ。だからお金持ちになりたかったら、努力しなさいという。そして努力がむくわれる社会にしないとだめだという。
この声に、お金持ちでないひとまで同調する。なぜなら、テレビや新聞でお金持ちを尊敬している知識人がそういいふらすからだ。知識人は自分たちは優秀なのにあまりむくわれていない。それはこの社会が能力のあるものに酬いようとしないからだと考えている。だから、基本的に金持ちの味方なのだ。
こうして、お金持ちも、そうでない人も、頭の中がお金のことでいっぱいになる。まるで世の中にはお金の問題以外に重大なことは何もないかのようだ。そして学校でもお金の儲け方を勉強させろという声まで出てくる。
アメリカの小学校では株の買い方まで教えるそうだ。とうぜんながら子供たちも自分もお金持ちになって、高級車を何台も買い、プールのある豪邸に住みたいと思うわけだ。
しかし、お金はそう甘いものではない。お金のせいで人は、神経衰弱になったり、過労になったり、自殺したりする。朝から晩まで、株価が気になってしかたがなかったり、人と争ったりする。そうしたことは学校ではあまり教えない。学校もまた、知恵や真実によってではなく、お金によって支配されているからだ。
お金は国同士をも争わせ、戦争を起こしたりもする。それでもほとんどの人はそれがお金のせいだとは思わない。えらい学者がいうとおり、人間の悪い本能だ、しかたがないと思っている。こうしてお金は子供から大人まで、すっかり人間をとりこにしてしまった。
多くの人々はこうして、自分がお金の奴隷であることも知らずに、一生をお金にあやつられて生きていくことになる。ルソーが現代に生きていたら、人間を縛り付けているこの見えない支配者を見抜いて、それは<お金>だというに違いない。
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