橋本裕の日記
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| 2005年07月22日(金) |
ジャンボタニシの風景 |
青田で稲がよく育っている。その田んぼの畦や用水路に、赤い葡萄状のものがたくさんへばりついている。何だか気味が悪い。妻に訊くと、これがジャンボタニシの卵だという。
ジャンボタニシはタニシではない。正式名称スクミリンゴガイといい、もともとは南米原産の腹足類(巻き貝)である。貝なのに肺呼吸もできるらしい。人体に有害な寄生虫がいるので素手でさわってはいけない。その生命力たるや日本のタニシの比ではなく、雑食性でなんでも食べ、田んぼの稲も食べるので農業の障害になる。 もともと九州の業者が食用として輸入し、養殖していたが、そのご貝に寄生虫や毒がみつかり、業者が放棄したために野生化して全国にひろまった。とにかくとんでもないものを持ち込んでくれたものだ。
妻は散歩の途中、傘の先でこれをつぶして歩く。私は「気味がわるいからやめてくれ」とそっぽを向いて逃げ出す。 「どうして農家の人は駆逐しないのだろうね」 「どこも請負にまかせているのよ。自分で田んぼを管理していないのね」 そういえば、田んぼにあまり農家の人の姿を見かけない。
この時期、ところどころの田んぼで水を抜き出した。水を抜かないと、稲の根がしっかりと張らないらしい。妻の実家は農家だから、こうしたことにはとても詳しい。聞けば何でも答えてくれる。そのうえ、私よりも生きることにおいてはたくましい。わが家ではゴキブリ退治も、生け捕りにしたネズミの処置も、妻の役目になっている。
以前に隣の家で悲鳴がするので行ってみると、庭に蛇がいた。妻はそれを素手で捕まえて袋に入れ、自分の畑に逃がしたのだという。 「蛇がこわくないのか」 「隣の奥さんの悲鳴の方がよっぽどこわかったわ」 隣の奥さんは妻の行動を今でも話題にするらしい。私も妻の野性味のある行動に脱帽するしかない。
田んぼが干上がっても、ジャンボタニシは平気らしい。しかし、魚達は水がなくては生き延びることができない。田んぼの傍らの用水をみると、フナやドジョウがうようよいた。いずれここも水がなくなって、彼らは死滅することになる。
ある日、妻と私は網とバケツをもって散歩に出かけた。これで死滅寸前の魚達を掬い、木曽川に放してやろうというわけだ。妻の実家ではこれを毎年しているという。妻と二人で魚を入れたバケツをもって川に降りていき、逃がしてやった。
散歩から帰り道、妻の畑によって、スイカの実り具合をながめた。もう人の頭くらいありそうなのがいくつか育っていた。そろそろ食べ頃のようだ。近くの畑でスイカが盗まれたので、わが家のスイカも心配だ。
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