橋本裕の日記
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2005年07月14日(木) 恋愛小説家

 ジャック・ニコルソン主演の「恋愛小説家」を、8年ほど前に名古屋の映画館で観たとき、前の人の頭が邪魔になって、字幕がほとんど見えなかった。だから肝心のセリフがよくわからず、雰囲気だけで観たのだが、それでもそれなりに面白かった。

 今回DVDをかりてきて、ふたたび見直した。主演男優賞をとったニコルソンの演技はなかなかのものだった。ニコルソンのアクのある演技にたいして、主演女優賞のヘレン・ハントのさわやかな自然体の演技もとてもよい。となりのゲイの青年が飼っているモップ犬の演技がこれまた秀逸と、いろいろ見所がある。

 ニコルソンが演じるのは恋愛小説家。愛がどうのこうのとという歯の浮くようなラブ・ロマンスを書き、そこそこ収入もあって、若い女性に熱烈なファンもいるようだが、現実の作家は近所でも鼻つまみものの偏屈な独身男。

 脅迫的な潔癖性で、レストランにも自分用のプラスチックのナイフとフォークを持参するような男。坐る席もきめている。そして毒舌でいつも周囲の人々を傷つけている。

 こんな嫌みな男にもひそかに好きな女がいる。それは行きつけのレストランのウエイトレス。しかし、不器用な彼は失敗ばかりをしている。いろいろなエピソードがあって、ようやく二人は旅さきのレストランで食事をともにすることになる。

 母親と喘息もちの子供をかかえた貧しいやもめ暮らしの中で、せいいっぱいよそ行きのドレスをしてあらわれた女に、彼は「このレストランは男は正装でなければならないのに、女は普段着で入れてもらえるのか」などと無神経な言葉を吐く。

 食事を前にして怒って席を立つ女。あわてて引き留める彼に、女は「それなら、私をもっといい気分にさせて。どうして、私をがすきになったの。私を満足させるようなことを話してみて」とにらみつける。

 このとき彼が口にする言葉がなかなかのものだ。これを聞いて、「私が今まで聞いた中でいちばんの誉め言葉」だと女の気分がなおる。さてそのセリフというのがこれだ。

 You make me want to be a better man.

「君はぼくにもっといい人間になりたいと思わせてくれる」

 映画ではこのあと彼はまたドジを踏む。彼は最後まで「I love you.」を口にしない。しかし、その気持を伝えるために、必死に言葉をつむぐ。その言葉に彼の真心が入ったとき、彼女の気持ちが動く。

 そうして必死で努力する彼の姿が、なかなかほほえましい。性格の悪い人間に見えた彼が、少しずつまともな人間に見えてくる。不器用だが、温かい心の持ち主だということもわかってくる。実は、彼女はそうした彼をいくらか理解し、受け容れていたのだ。そのことが、最後に彼女の言葉で明かされる。

 DVDでじっくりみてみると、いろいろな細部がわかってきて面白い。夥しい毒舌にまじって、水晶のような美しい会話がところどころに光っている。私の好みの映画のひとつだ。最後に、サイトで見かけた映画評を紹介しよう。

<ヘレン・ハントはペイ・フォワードでもそうだったが、最初は「やつれたおばさん」で話が進むにつれてどんどんチャーミングになっていく役は本当にうまい!それとジャック・ニコルソンの毒舌で頑固者(?)なのに人にモノを頼まれると結局嫌と言えずに引き受けてしまうし、他人の心配して世話は焼くし、忠告されると以外に素直に受け入れてしまうという役柄が正に「人は見かけによらない」典型で面白かった。作品としては軽いコメディーだが、二人の見事な演技で退屈しない作品。ただジャックのラブシーンだけは御免被りたい。>

http://jtnews.pobox.ne.jp/movie/database/
treview/re407.html

恋愛小説家
原題[As Good As It Gets]
1997年【米】

監督 :ジェームズ・L・ブルックス
男優 :ジャック・ニコルソン
:キューバ・グッディングJr.
:スキート・ウーリッチ
:グレッグ・キニア
女優 :ヘレン・ハント
:シャリー・ナイト
音楽 :ハンス・ジマー
脚本 :ジェームズ・L・ブルックス


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