橋本裕の日記
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| 2005年06月30日(木) |
国際社会へのパスポート |
私の憲法についての立場は前に書いた。もう一度繰り返すが、「自衛隊は違憲である。憲法をどう読んでも、これ以外の解釈はありえない」ということだ。自衛隊が違憲だというのは、憲法<第9条>に照らせば明らかだと思う。
現状を変えるのではなく、憲法を変えようということには反対。その亜流が、現状を変えなくてもすむように、憲法の解釈を変えようというものだが、私はこれも<改憲論>だと思っている。
自分に都合の良い拡大解釈で、憲法をヌエのようなものにしてはいけない。先の戦争を<自衛戦争>だと主張する人々がいるが、これと同類である。拡大解釈を許せば、「侵略」が「自衛」になる。白を黒と主張することもできる。
現在の国際法では、全ての国は自衛のため以外の軍隊は持てないことになっている。つまり、現在地上に存在する軍隊はすべて「自衛隊」なのだ。実はこの不戦条約は第一次大戦後に作られたもので、日本もこれに加わっていた。戦前の皇軍も「自衛隊」なのだ。だから、中国を侵略したのも真珠湾を奇襲したのも、皇国の防衛のためだと言われた。
憲法はこうした歴史認識の上に立って、軍隊の存在を禁じた。憲法を曲解して、自衛隊の存在を許すということでは、大日本帝国憲法と変わらない。だから、憲法問題のポイントは、自衛隊を合憲と見るか違憲と見るかである。
アメリカの戦略は日本を再軍備させ、アメリカ軍の手足として使うということだ。すでに自衛隊はその装備から見ても、一国の軍隊というよりも、これを補完するための下請け機関に過ぎない。現在でもアメリカ軍の指揮系統の中に位置づけられているが、これからはさらに一体化が進むだろう。
現在、中国、アメリカ、日本は経済的に緊密な関係を築いている。日本は中国に部品を輸出し、中国の安い労働力をつかって組立て、中国からアメリカに輸出してきた。これによって日本経済はたいへん潤っている。そして中国もまた日本の技術協力によって工業力を付け、未曾有の経済成長をとげつつある。
アメリカは中国から安くて良質な製品を輸入し、ゆたかな消費生活をたのしんでいる。とうぜんお金が足らなくなるので、ドルを輪転機で刷ることになるが、これは日本や中国がその見返りとして武器やドル(国債)を買ってくれるのでアメリカも不満はない。
しかしアメリカは、今後中国が伸びてくることを予想している。したがって、中国に対抗するために、日本を「不沈空母」として利用しようと思っているはずだ。下手をすると、日本はふたたびアングロ・サクソンにそそのかされて、日露戦争のように火中の栗を拾わされるかも知れない。
ところが、日本に戦争と戦力の保持を禁じた「第九条」があるかぎり、そうはならない。この意味で、日本国憲法は何百万もの軍隊より強い日本の守り本尊である。これを捨てることは、難攻不落の大阪城の外堀をうめるのとおなじたぐいの愚行ではないだろうか。
私はかっての社会党の非武装中立論は非現実的だと考えている。日本が生き残る道は、中立ではなしに、近隣との友好関係を築き上げることだ。冷戦が終結した今、これは夢物語ではない。要するに、その気があるのかないかだ。お手本はドイツである。
どのような国創りを目差すか、憲法はその大切な指針である。私たちが憲法を尊ぶ姿勢を見せれば、世界の日本を見る目も変わる。憲法を私たちが支持することで、日本は世界から信用をうる。これ以外に、日本が国際社会で生きていく道はない。憲法は国際社会へのパスポートなのである。この切り札をもっと活用してはどうだろう。
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