橋本裕の日記
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| 2005年06月24日(金) |
サラリーマン増税に反対 |
政府税制調査会(首相の諮問機関、石弘光会長)は21日、個人所得課税の見直しに関する報告書を公表した。税負担を軽くする各種控除について軒並み縮小・廃止の方針を打ち出した。景気対策の定率減税の全廃と、地方への税源移譲のための所得・住民税の税率変更を盛り込んだという。
おりしも学校で収入の少ない家庭の生徒に給与する「修学資金」の係をしていて、その書類の整理に追われている。生徒の持ってきた源泉徴収票から数字を拾って計算しなければならない。父親がリストラ中であったり、体をこわしていたり、ガンでなくした母子家庭だったりする。みんなそれなりの理由をもって、定時制で学んでいることがわかる。
これまで源泉徴収票などというものをしっかりみたことがなかった。税金の仕組みについて書かれた本を片手に、「収入」「所得」「所得控除」などの正確な意味を探り、数式の意味を理解しようと毎日悪戦苦闘している。おかげで、税金のしくみがよくわかった。
給与支払金額−給与所得控除=給与所得控除後の金額
ここで、給与所得控除というのは、事業者所得でいうと「必要経費」にあたるものだ。この額は給与所得の金額に応じて機械的に決まる。その表がある。たとえば、
5,000,000円〜5,004,000円未満=1540,000円
給与所得控除後の金額=5,000,000円−1540,000円 =3,460,000円
という具合だ。つまり500万円の年収がある人も、課税の対象になるのは346万円ですむことになる。給与所得控除分154万円は課税の対象から除かれるわけだから、この金額が大きければそれだけ税金が少なくてすむ。
ここまでは一律な控除だが、この先、課税対象者の条件の違いによって、基礎控除(38万円×扶養者数)、配偶者控除、特定扶養控除、生命保険料控除などと言ったさまざまな個別な所得控除がある。その合計が「所得控除の額の合計額」である。給与所得控除後の金額からこれを引いた「課税給与所得金額」が課税対象になるわけだ。たとえば、所得控除の額の合計額が73万円なら、つぎのようになる。
課税給与所得金額=給与所得控除後の金額 −所得控除の額の合計額 =346万円−73万円=273万円
これに定額税率0.1を書けた額が基本的に税金だということになる。しかし、実際は、景気対策のために定率減税が実施されてきた。これを差し引いて、最終的な税金である「源泉徴収税額」が決まる。たとえば20パーセントの定率減税だと次のようになる。
源泉徴収税額=課税給与所得金額×0,1−定率減税 =273万円×0.1−5.46万円 =21.84万円
つまり、現行の税制だと500万円の収入人はおおよそ22万円ほど税金をとられるわけだ。もちろん年収が上がれば、税金の割合も高くなる。
政府は税制をかえて来年から所得控除を大胆に縮小し、定率減税も廃止して、大幅な「増税」をしようとしている。これについての批判を、江草乗さんのコラムから引用させていただくことにしよう。
<サラリーマンには必要経費が認められない。オレは仕事の時にスーツを着ていることが多いが、それは自前で用意しないといけないのである。また、教材研究のために本代をかなり使ってるが、それもまた自前で払わないといけないのである。仕事用に使うノートパソコン二台とデスクトップ二台を買った費用はもちろん自前である。
そうしたすべてのものに対して必要経費が認められない代わりに、一定の金額を所得から控除してくれるという仕組みが「給与所得控除」という制度だ。年間の給与所得控除の総額は給与所得総額(約213兆円)の約3割にあたる61兆円(2005年度予算ベース)である。この61兆円からさらなる税金をぼったくろうと政府は考えてるみたいなのである。この控除額を今の水準の3分の2に減らすと、年収500万円の世帯(夫婦と子1人)で約10万円、年収800万円の世帯で20万円の負担が年間に新たに生じることになる。高給取りのサラリーマンにとってはかなりのダメージである。配偶者控除や特定扶養控除も廃止される方向だという。
こんな税制変更は断じて許してはならない。もしも今の財政悪化の責任がオレにあるのなら、どんな罰も甘んじて受けよう。どっこいそんなわけがないだろう。てめえら政府の馬鹿どものゼニの使い方が悪かったから財政状況が悪化したのであり、100%オレのせいなんかではないのである。オレ同様に馬鹿正直に源泉徴収で税金を支払ってきた日本中のサラリーマンには何の罪もないんだぜ。全くひどいことしやがって。
この見直しに関して政府税制調査会の石弘光会長は「この国を支えるには、サラリーマンに頑張ってもらうしかないというメッセージを送りたい」と発言したという。それはただ「取りやすい所からもっと取る」だけのことであって、税負担の公平とはほど遠いどころか、ますます不公平は拡大するのだ。ガッポリ脱税しているパチンコ屋や不動産業者、風俗嬢やヤクザといった連中はそのままにして、これまでまっとうに税を払ってきたサラリーマンからさらに取ることのどこに正義があるのか。>
http://www.enpitu.ne.jp/usr4/41506/diary.html
所得税は過去十数年、定率減税や課税最低限の引き上げなど、景気浮揚のために減税で、最盛期で約26兆円あった所得税収は約14兆円にまで落ち込んでいる。一方で、国債の発行は増大するばかり。財政再建が必要なことはわかるが、その方向性には大いに疑問がある。税制改革については私なりのビジョンをもっているが、長くなったので、今日はこのくらいにしよう。
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