橋本裕の日記
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| 2005年04月21日(木) |
日中友好の灯を消すな |
中国の反日デモの広がりを受けて東京株式市場が大幅下落した。米経済の減速懸念も強まるだけに、日本のエコノミストの間では、「中国の反日運動が長引けば、踊り場にある日本経済の足を引っ張りかねない」との見方も出始めている。
財務省の貿易統計によると、2004年に日本の対中貿易が戦後初めて対米を上回り、香港と合わせた貿易総額は22兆円を超えた。「中国の経済成長で最も恩恵を受けたのが日本。反日運動拡大は日本企業のイメージ悪化につながる」と株式関係者は心配しているという。
それにしても、中国の反日運動は当局が本腰を入れて取り締まらないこともあって、なかなかおさまらない。テレビでみると、デモに参加した学生や市民は「愛国無罪」と称して、投石などを警官隊の前で公然と行っている。これに対して、中国政府の公式謝罪はない。あくまで、日本側に責任があるという立場である。
終戦後、毛沢東指導部は「戦争を起こし、中国を侵略したのは一部の軍国主義者で、日本人民もまた被害者」という立場をとり、日本に賠償をもとめなかった。しかし、いつのまにかその軍国主義者たちが靖国神社に祭られ、日本の首相が公然と参拝を繰り返している。その他にも日本の戦争責任を否定するような政治家の発言や教科書の採択が続いた。中国にとってこれが容認できない事態であることは想像がつく。
中国はこれまでまがりなりに、「日中友好」を国是としてきた。その背景には日本の援助で経済を発展させたいという思惑があったはずである。実際に日本のODAは中国にとってもありがたかったはずである。
しかし日本から中国への技術移転も一段落した。そして、中国の貿易額は日本を抜いて、アメリカ、ドイツに続きて世界3位だ。中国が反日活動を容認している理由の一つとして、こうした経済的背景が考えられる。中国はもはや日本に依存しなくてもやっていけると判断したのではないだろうか。日本の代わりになるパートナーはアメリカでもよいし、EUという選択もある。簡単に言えば、中国による日本切り捨てである。
小泉首相はODAの中止を示唆したが、これも中国にとってはそれほどの打撃にはならない。日本から貸与されたODAを中国は誠実に返還している。現在では日本からの貸与額より中国からの返還額の方が多いくらいだ。中国はいざとなれば「歴史認識の問題」を持ち出し、この返還に応じないという手段さえ持っている。
貿易の内訳を見ると、昨年一年間の日本から中国(含む香港)への輸出は 11 兆 8,278 億円、輸入は 10 兆 3,727 億円である。日本は中国のおかげで、約 1 兆 5,000 億円もの黒字を稼ぎ出し、これによって景気がたもたれてきた。中国から見ると、約 1 兆 5,000 億円も日本に稼がしてやったことになる。
中国は日本を失っても、その代わりをEU(ドイツ)などに見いだせるが、日本は巨大な中国市場を失っては困るので、経団連の奥田会長も小泉首相に中国と仲良くして欲しいと申し入れてきた。こうした中で、小泉首相は、今後アメリカ一辺倒のやりかたを、見直さなければならなくなるだろう。そうしないと、日本経済の将来があやうくなる。
こんどの反日デモの責任は、「日本の誤った歴任認識に基づく一連の行動が原因だ」と中国政府は言っているが、これはひとつの理由であって、中国政府の強腰の背後には、こうした経済問題の読みや戦略転換があると考えた方がよい。
この本質を理解しないで、過去にばかり捕らわれ、反日デモの現象面ばかりに目を奪われていると、日本は将来をあやまることになる。日本の過去が問題にされる場合でも、問題の本質はあくまで現在にあることを忘れてはならない。
中国政府が反日デモをしっかり取り締まろうとしないのは、さまざまな思惑があってのことだろう。日本の多くの論者がいうように、中国政府は国内の不満を過去の日本の侵略行為に向かわせガス抜きをしているという面もあるに違いない。しかし、中国の反日活動をこうした観点でのみで割り切るのは問題である。
中国政府としては、アジアで日本と友好関係を築き、パートナーとして共存共栄するという世界戦略も考えらる。たしかに、最近はこのシナリオが後退し、中国はむしろEUとの連帯を深め、日本やアメリカに対抗し、アジアの覇権を握ろうと考え始めているようだ。しかし、中国をこうした覇権主義に向かわせてはいけない。そのために日本は何を為すべきか。
日本の戦略はあくまでアメリカ追随だが、この方向で日本の未来が開けるのか疑問である。下手をすると、中国はアメリカとさえ手を握り、日本は完全に世界の孤児になるかも知れない。中国、韓国という大切な近隣の二国の世論が反対であれば、日本は安保理の常任理事国になるべきではない。日本はもっとアジアに目を向けて、近隣諸国との友好関係を築き上げるべきだ。
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