橋本裕の日記
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2005年04月06日(水) 反面教師としてのアメリカ

 いまや世界で唯一の超大国・覇権国家となったアメリカだが、その内情はどうだろうか。自由と民主主義を高く掲げ、「民主国家にするため」と称して、イラクに戦争をしかけたアメリカは、大統領の華麗な就任演説通りの立派な国なのだろうか。

 ドストエフスキーは「秀でた人がどう処遇されているかではなく、犯罪人がどう取り扱われているかを見れば、その社会を判断することができる」といった。そこでアメリカの現実を知るために、犯罪に関する統計を見てみよう。

 米司法省の推定によると、アメリカ人は平均して一人に一挺の銃があるという。そして、銃による殺人、事故、自殺などで命を失った人の数は毎年3万人を越えている。1995年の統計によると、3万5673人が凶弾に倒れている。

 アメリカのキャンパスでは銃による殺人事件が跡を絶たない。コロラド州のコロンバイン・ハイスクールでは、2人の生徒が銃と手製の爆弾で13人の教師と学生を殺害し、25人に傷を負わせている。こうした事件がその後も毎年のように起きている。アメリカの青少年10万人につき毎年平均して15人が銃によって命を落としているが、この数字はその他の25の先進国における合計の15倍も多いのだという。

 米司法省司法統計局が発表した数字によると、98年にアメリカで服役中、執行猶予中、および仮釈放中の成人犯罪者は592万人に達している。アメリカでは34人に一人の割合で犯罪者がいることになる。

 各州あるいは連邦刑務所に服役中の囚人は、1985年末には74万4千人だったのが、98年には180万人、そして2000年にはついに200万人を越えた。人口10万人でみると、313人(85年)から668人(98年)へと、10年あまりで倍増している。ちなみに日本は一桁少なくて、約30人ほどである。全世界の犯罪者の1/4がアメリカにいるという。

 カリフォルニア州の刑務所の服役者数は、1980年の2万3511人から2000年には16万2000人と、20年間で約7倍にはねあがっている。刑務所関連の州の予算は、1985年には7億2800万ドル(約800億円)だったものが、2000年には46憶ドル(約5060億円)と、15年間で6倍以上になっている。

 犯罪を抑えるために政府が打ち出した対策は「厳罰主義」である。たとえば窃盗などの非暴力犯罪であっても、3回罪を重ねると、25年から終身の懲役刑が科される。いわゆる「三振ノックアウト法」である。

 アメリカでは2000年の段階で38の州が、国連の議決に反して、少年への死刑を認めるようになっている。さらにこの年齢を11歳にまで引き下げる動きがあるという。しかし、こうした厳罰主義が充分な効果を上げているとはいえない。むしろ安易な死刑判決と無罪の人間に対する死刑執行を多発させ、深刻な人権蹂躙が生じている。

 それでもアメリカでは犯罪を抑える手段として、あまり効果の期待されない「厳罰主義」に走るのではなく、貧富の格差の是正といった社会福祉政策を考えるべきだという声はあまりきかれない。

 刑務所の運営や治安に費やされる予算は莫大なものになってきている。しかし同じお金を使うのなら、これを福祉や教育につかうべきではないか。アメリカ社会に必要なのは、そうした対症療法ではなく、もっと根本的な治療ではないのだろうか。
 
 人権侵害の最たるものは殺人をはじめとする犯罪である。さらに、市民を縛る過酷で殺伐とした法が、人々の上に重苦しくのしかかっている。アメリカの犯罪統計から浮かび上がってくる実像は、ブッシュ大統領が自画自賛するほどすばらしい「自由の大地」ではないということだ。日本はこれを反面教師として学ぶべきだろう。


橋本裕 |MAILHomePage

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