橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
毎年、大学入試センター受験者の受験生の自己採点結果をもとに、ベネッセコーポレーションと駿河台予備校が都道府県ごとの平均点を計算している。この順位が低いと、県議会で追求される。たとえば、3月3日の島根県議会では自由民主党の山根議員が次のように質問している。
「この成績はこれまで本県の教育がいかに行われてきたか、検証、評価する大きな指標とすべきであると考えるものであります。このことを放置すれば、安心な学校への県民の信頼を損ねるだけであります。この残念な結果を知事並びに教育長はどのように受け止められているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います」
知事や教育長は、各県によって資料の提出状況に違いが見られ、必ずしもこの統計が教育水準を正確に表しているといえないとしながらも、「結果は結果としてそれは素直に受け止める、それは必要なことだと思います」と答えている。島根県に限らず、他の都道府県でもこの数字をめぐって様々な動きがあったようだ。
福井県教委はこの順位を上げるため、「推薦合格が決まった生徒は極力受験させない」「推薦が決まった生徒の受験結果は極力出さない」ことを決めて、各高校に通達していたという。この結果、福井県の全国順位は昨年度の25位から20位に向上した。
私の学校の場合、50名近くが受験したが、その大半は推薦入試で合格した生徒だった。入試のためではなく、大学入学後を考えて、学力を向上させる動機付けとして受験を奨励している。私のクラスからも4人受験したが、3人は推薦入試合格者たちだった。そうした生徒達の得点は低かったが、資料提供には応じている。愛知県の場合、福井県のような通達はなかったのだろう。
県別の平均点を上げるため、推薦入試合格者の受験を制限したり、また、その結果を報告しないというのは、県単位ばかりではなく、学校単位でも自主的に行われているのではないかと思う。今後、学校評価制度が整って来るにしたがい、こうした動きが加速されるかも知れない。
アメリカの場合、全国統一テストが実施されている。これによって、各州、各学校での平均点が公表され、それぞれの教育機関の評価付けが行われているようだ。これは一見合理的なシステムのようだが、これもどこまで正確な統計か疑問視されている。
というのも、各教育機関は成績を上げるのに熱心なあまり、校長自らカンニングを奨励したり、数値の改竄をしているケースが多いからだ。この結果、生徒の間ではカンニングが常態化していると、かって朝日新聞が報じていた。
私が以前勤務していた進学校の場合も、進学塾の統一模試を行う場合、教科によっては事前にその問題を見て、生徒にその内容を教える場合があった。これをやりすぎて、その教科の平均点が異常に高くなり、他校から問い合わせがきたこともある。
また、私が新任の頃は、ベテランの教師が私のクラスの平均点を見て、もう一度自分のクラスの答案を回収し、採点をしなおして、何が何でも自分のクラスの平均点を上げようと操作したのを目撃したこともある。評価にこだわると、こうしたおかしなことがどうしても生じてくる。
こうした教育環境の中に置かれた教師も気の毒だが、生徒達もまた気の毒である。平均点を競い合い、順位を付けることにどんな意味があるのだろうか。教育とは「善く生きる力をつけること」でなければならないが、今の教育には、この「善く」という観点がすっかり抜け落ちている。
|