橋本裕の日記
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2005年03月15日(火) チップのトラブル

 タイ旅行を思い立ったのは2月に入ってからだ。新聞のチラシでみて、タイに7万円で行けることを知った。それからいそいでパスポートをとった。ガイドブックも買い込んで、タイや海外旅行について知識を仕入れた。

 以前に読んだことがある日本に滞在したインド人ビジネスマンの本に、「日本はチップがいらない不思議な国だ」と書いてあった。私たち日本人はチップを払わないのを当たり前だと思っている。しかし、日本の常識は世界の非常識である。

 世界に出たら、この世界の常識に従わなければならない。もし、この常識を知らなかったらどういうことになるか、これについて、私たち一家が味わった不快な思い出について、あえてふれておこう。

 私たちが泊まったバイオークスカイホテルは、ガイドブックのランキングでは中級だが、広々としたスイートで、しかも眺めがよかった。84階建てのホテルは東洋一だということだし、77階のレストランでの朝食バイキングも最高だった。

 客室係へのチップとして、私たちは毎朝、20バーツ札を枕の下に入れておいた。20バーツという値については、ガイドブックに最低でもそのくらいとあったし、むやみにチップを与えてはいけないと書いてあったので、その忠告に従ったわけだ。

 ところが、三日目の朝、いやなことが起こった。娘達の寝室の時計が一時間早めてあったのだ。娘達はこの時計を信じて一時間も早く起きた。そして自分の腕時計を見て、時間が間違っていることに気付いたわけだ。

 すでに前日の夜から時計は1時間早くなっていた、しかし、まさか時計が間違っているとは思わなかったので、「まだこんな時間か」と思って寝たのだという。客室係が何かの理由で時計を操作した可能性がある。

「チップは毎日置いたのだろうね」
「枕の下に20バーツずつ置いたわよ」
「20バーツでは足りないのかな」

 実は被害はこれだけではなかった。夜中に2度ほど電話があったのだという。電話に出るとすぐに切られた。おまけに1時間も早く起こされて、二人の娘は寝不足で不機嫌な顔をしている。さっそくガイドさんを通してホテルに苦情を申し立てたが、すでに客室係は交代しているとの話だった。

 どうしてこんないやがらせを受けたのか。考えられることは20バーツというチップの額が妥当だったかである。タイの物価の国際比較を見ると、アメリカを100としたとき、タイは30とある。アメリカと日本の物価はほとんど同じだから、タイの物価はおよそ日本の1/3と見なしてよいだろう。

 そうすると、およそバーツを10倍すれば日本の物価に等しいことになる。つまり、20バーツは200円に相当とするわけだ。日本以外では、サービス業の賃金は安く、従業員はチップをたよりにしているという。そうすると、このホテルの場合、一人20バーツというチップは安すぎたのではないだろうか。

 もちろん、客に嫌がらせをした従業員の行為は許せないが、私たちの方にもすこし配慮が足りなかった点があったのかもしれない。倍の40バーツくらい弾んでおけば、こうした不愉快な経験はしなくてすんだのではないかと思う。

 そう考えると、他にもうなずけることがあった。たとえば冷蔵庫の中に入っていたサービスの水のボトルが二日目から小さくなったことだ。これは「もっとチップをはずんで下さい」というシグナルだったのかもしれない。

 一番心配だったのは貴重品の管理である。私たちはカードを持っていなかったので、支払いはすべて現金だった。この現金とパスポートをどうしたらよいかだが、ガイドさんに訊くと、「ホテルの金庫に入れてください」とのことだった。しかし、ガイドブックには中流以下のホテルでは金庫は安全ではないと書いてある。

 迷ったが、ガイドとホテルを信用して、部屋の金庫に入れることにした。封筒に現金とパスポートを入れ、厳重に封をして、毎日帰る度に封に異常がないか確認した。さいわい、この点については問題は起こらなかった。

 こうした経験をして思うのは、チップのいらない日本はなんというすばらしい社会かということだ。私たちはチップがなくても手を抜かず、笑顔をたやさない。たとえ世界の非常識と言われようとも、こうした日本社会の美しい伝統を残していきたいものだと思った。


橋本裕 |MAILHomePage

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