橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
企業は株主の所有物であり、投資家が利益をあげるために存在するというのが米国流の現代的企業観である。投資家はこの目標を達成するために腕のある経営者をやとい、会社の経営を任せる。成績が出なければ、経営者もすぐにリストラされる。
経営者は企業の株価を上げ、投資家にできうるだけ多くの配当金をもたらすべく必死に努力をする。そのためには一時に大量の従業員を解雇したり、また資金力にものを言わせた他社株の敵対的買収にも乗り出す。
ここにあるのは食うか食われるかのホップス的闘争状態である。他社によって買収されないためには、発行済み株価の総額を大きくしておかなければならない。資本金の小さな会社はそれだけ買収されるリスクが大きいからである。
今回のニッポン放送の場合も、資本金が比較的小さい(株の時価総額2099億円)ということが、外資であるリーマン・ブラザーズによる敵対的買収を容易にした。しかも、ここにも比較的小さなニッポン放送が、もっと大きなフジ・サンケイグループ(時価総額5760億円)の親会社だという歪な上下関係があった。
小さな親会社を通して、大きな企業グループを支配するという企業形態が、ここでも裏目に出たわけだ。これは巨大企業を小さな資本金で支配したい専制的なオーナーにとって魅力的な方法である。しかし、敵対的買収にはとてもよわいシステムだということが今回の騒動で明らかになった。
リーマン・ブラザーズは時間外取引という奇手を使ってニッポン放送の株を40パーセント近くも買収することに成功し、これをライブドアの堀江氏にその日のうちに譲り渡した。そのため、見かけ上は堀江氏が買収したように報道されている。ここにも企業買収にてなれた外資の巧妙なカラクリがある。
堀江氏はニッポン放送株を取得するため、800億円ものライブドアの株をMSCB(転換社債型新株予約権付き社債)という形でリーマン・ブラザーズに提供している。リーマン・ブラザーズはこの株を有利な条件で売却して巨大な利益を得ることができるし、また一部保有したまま、ライブドアに株主としての影響力を行使することもできる。
いずれにせよ、外資の援助があったとはいえ、若干32歳の堀江氏が、フジ・サンケイグループの親会社の株を40パーセント近くも買収することに成功し、筆頭株主に躍り出たということは衝撃的なことである。
これに対抗して、ニッポン放送は資本金を一気に2.4倍にするという常識外れのTOP(株式公開買い付け)で対抗しようとしているが、これもまた法律的に微妙な問題で、堀江氏はさっそく裁判所に訴えた。裁判所の判定は来週中にも下されるようだ。
結果がどうなるか今の段階ではわからないが、確実なことは、今後こうしたケースは次々と生じるということだ。その理由は、日本の会社の株式の時価総額が外国の企業に比べて非常に小さいく、これが外資による敵対的買収を誘い込むからだ。
株価総額でみると、日本の超優良企業のソニーでさえ、韓国のサムソン電気の49パーセントしかない。銀行で見ると、三菱東京ファイナンシャル・グループがアメリカのシティグループの24パーセントだ。
新日本石油はエクソンモービルのと3パーセント、アサヒビールはコカコーラーの5パーセント、イトーヨーカ堂はウオルマートの7パーセント、新日鉄でさえアメリカのアルコアの52パーセントである。
日本の資本は欧米の巨大資本に太刀打ちできないわけだが、買収されずにすんできたのは法的な障壁があったからだ。ところが、「年次要望書」でアメリカはこれを廃止するように求め、小泉首相もこれに応じ、「対内投資を促進」するために、次々と商法が改正された。
この春の国会でも新会社法案が提出される予定だ。これが可決されれば、外国企業もライブドアのように自社株式との交換によって日本企業を買収できるようになり、いよいよ本格的に外資による日本企業の買収がはじまるだろう。ニッポン放送買収事件のようなことは日常的に起こるに違いない。
これに対抗するには、こうした「投資に名を借りたマネーゲーム」を規制する法律を制定することだ。どうじに株式市場の公開性や透明性を高め、株主への利益還元率を高めて、国内の多くの資金を日本の株式市場に誘導することも必要である。
英エコノミスト誌によれば、昨年までの20年間のドルベースでの株式投資のリターンは、年平均で、英国株が15パーセント、米国株で13パーセント、日本株で6パーセントのプラスだったという。この間の経済成長率からして、これは日本企業が営業利益を上げていないということではなく、企業が市場を軽視し、投資家への還元を怠っているということだ。
これからは企業も株式市場を重視する経営努力をしなければならない。従業員や顧客重視といった日本型のよいところを活かしながら、国際社会のルールの中でもたくましく生き抜いていくだけの資金力をつけなければならない。そうしないと、日本企業はやがて世界から淘汰されて、日本は外資の支配する経済植民地になるだろう。
日本にはもともと1400兆円という莫大な個人金融資産がある。最大の問題はこれが日本企業ではなく、日本の国債や米国債、おおくの外国企業に投資されていることだ。日本を買収する外資も、じつは日本の資金を使って懐をうるおし、巨大化した面がある。こういう日本にとって不利なシステムを変えていかなければならない。
|