橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2005年02月28日(月) ドストエフスキーを捨てる

 私は自分の人生をあと3年間と見積もっている。そしてこの間に、私の人生を清算しておきたいと考えている。清算するというのは、簡単に言えば、あらゆるものを捨てて、無一物になるということだ。

 清算すべきもののひとつに蔵書がある。これをこの1年間かけて減らしてきた。毎月、資源ゴミの日に大量に排出するのである。おかげで、部屋の中が片づいてきた。この調子でいけば、3年後には私の部屋からすべての本がなくなりそうである。

 とはいえ、愛着のある蔵書を捨てるのは、身を切られるような淋しさがある。今回処分する本の中には、「ドストエフスキー全集」が含まれていて、とくにその感を深くした。この全集を買った30年前の日のことがありありと浮かんできた。

 私はこれを名古屋大学の生協で買った。自転車で下宿先まで運んだのだが、一度に運びきれず、往復したのを覚えている。夏の暑い日だった。自転車の荷台を何度も振り返った。自分の部屋の書棚に全集を並べたときの高揚感が昨日のようだ。

 それから、この全集を読みふけった日々。当時私は大学院の学生だったが、数年後には就職し、結婚し、それから二児の父親になった。この30年間で、何度この全集に手を伸ばしたことだろう。

 昨夜、書棚のなかから全集を取りだし、他の書物と同様にビニールテープで縛って、玄関先に置いた。やがて、それらは私の視界から完全に消え去ることになる。明日は卒業式だが、生徒達との別れ以上に、これらの書物との別れが淋しい。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加