橋本裕の日記
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2005年01月24日(月) 落ちた偶像

 1987年に堤義明は有力経済誌『フォーブス』で世界一の富豪と書かれた。資産総額は、210億ドル(日本円で3兆1,500億円・当時)ということだ。このときの世界ベストテンには松下幸之助が9位で入っていた。

 松下の資産総額は20億ドル(約3,000億円・当時)で、堤の10分の1である。ところが、両者の納税額は、松下孝之助が6億9,761万円にたいして、堤義明が2億4,468万円と3分の1である。資産総額からしたら、松下の30分の1ということになる。

 義明が君臨するコクドは、10年ほど前の資料によると40兆円という土地を所有しながら、納めた税金は1,300万円にすぎない。このことについて、義明は「税金を国土が払っていない理由は、利益があがっていないだけのこと。やりたい仕事が山ほどあって事業規模を広げているので、税金を納める余裕がない。従って利益が出ないので払わない」と答えていた。

 1998年に「高輪プリンスホテル」がオープンしたとき、開業記念パーティーには、総勢1万人の招待客が堤義明にこぞって「謁見」した。この中には元総理の羽田孜、竹下登、村山富市から、この後総理になった森喜朗までふくまれる。

 芸能界、スポーツ界からもトップスターが駆けつけたが、なかでも一目を引いたのが義明の隣で満面に笑みをたたえている女優の沢口靖子だった。彼女はプリンスホテルのコマーシャルに出演し、義明との親密な仲が噂されていた。

 2002年4月に行われた「品川プリンスホテル」の「エグゼクティブタワー」のオープンパーティーには2万人もの招待客を呼んだ。このときは小泉首相も駆けつけ、女優の朝丘ルリコや工藤静香らを交えて記念撮影をしている。

 しかし、今から振り替えってみると、この豪華なショーも、堤義明の精一杯の悪あがきだったのかもしれない。この頃、西武王国はすでに大きく傾いていたからだ。それどころか、すでに「王国」の落城がすぐそこに迫っていた。

 金融機関は、「西武鉄道グループ」16社に対して、総額1兆2,566億円を貸しこんでいた。「みずほグループ」が3,230億円で、全体の4分の1になる。「三菱東京グループ」が2,144億円。「三井住友」が870億円。「UFJグループ」は668億円。

 これらの銀行が、アメリカの圧力や金融庁の指導のもと、不良債権化をおそれて、資金の回収に回り始めていたからだ。堤はこの圧力をひしひしと感じ始めていたにちがいない。時の権力者小泉首相との親密さをいくら演出しても、もう往時のカリスマを回復することはできなかった。

 そしてついに、破綻がはじまった。2004年3月、西武鉄道が総会屋へ「利益供与」していたことが明らかになり、専務取締役らが逮捕されたのだ。堤義明は「自分と事件は無関係だが、公共事業を営む会社として起してはいけない事件」と言って「西武鉄道」会長を辞任した。

 さらに、去年の10月15日、堤義明は、突然記者会見を開き「グループ企業すべての役職を同日付で辞職する」と表明した。これはコクドが大株主である「西武鉄道」の株式について、さらに個人名義1,100人分の大量の株を、実際には「コクド」が保有していることがわかったからだ。

 それまで、大株主コクドの株式保有率が約68%といわれてきた。ところが実際には西武鉄道の株を88%も保有していたことになる。そして、西武鉄道はこれに相当する1200人分の株式の配当として毎年約4億数千間万円をコクドの口座にまとめて振り込んでいた。

 特定の株主が全株式の9割ちかくも所有しているということは、市場に開放される株式が1割しか存在しないということである。法律によれば、特定の株主が80%以上保有した状態が1年以上続いた場合には、上場廃止となる。ところが、西武鉄道は有価証券報告書の記載を偽って、こうしたことを30年以上もやってきた。

 西武グループの総帥として「天皇」と呼ばれてきた堤義明は記者会見で、「経営にタッチしていなかった」「何も承知していなかった」、と空々しい責任逃れに終始した。そして、こうした場合、起きることが起きた。つまり株式事務の担当者K・Yが自殺した。

 K・Yは法定外株式の保有が発覚することを恐れた堤義明の指示にしたがい、大量の株式売却の処理にあたっていた。そして問題発覚以降は取引先からの買戻し請求などへの対応に追われていた。

 これにくわえて、「SEC」(証券取引等監視委員会)の調べが彼に集中した。こうして追いつめれるなかで、自らの口を封じるための自殺だったのだろう。「歪んだ忠誠心」ゆえの自殺だったのかもしれない。

(参考サイト)
「噂の仕置き人」
http://uwasanoshiokinin.com/series-seibu.html


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