橋本裕の日記
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| 2004年12月30日(木) |
遠心力はどうして生まれるの? |
今日は「橋本流親子対話塾」の5回目である。「遠心力はどうして生まれるのか」というテーマで、子供と対話してみよう。
子「回転運動をすると遠心力が生まれるというのはわかったけど、それじゃ、どうして回転すると遠心力が生まれるの?」
父「それは前に答えただろう」
子「世の中がそんなふうにできている、って言ったよね」
父「そのとおりさ。しかし、君はこの答えに満足できなくなったんだね。つまり、遠心力という魔術師の秘密をもっと知りたくなったわけだ。じつはね、遠心力には大変な秘密があるんだよ。遠心力は、ほんとうはこの世に存在しない<仮想の力>なんだ」
子「それだったら、月が落ちてくるじゃないか。自転車だって、倒れちゃうよ。これまでの話は嘘だったの?」
父「君が電車に乗っているとするね。電車が駅に近づいてスピードを落とすと、君は前のめりになるだろう。なぜ、前のめりになるのかな」
子「電車のスピードが落ちたからさ」
父「もっとよく考えてごらん。以前お母さんが前の車に追突しておでこをぶつけたよね。原因は、前の車が急停車したのに、お母さんの車が止まれなかったからだね」
子「ぼくが前のめりになったのは、電車が止まりそうになったのに、ぼくがとまれなかったからかな」
父「そうなんだ。静止している物体は静止し続け、運動している物体はその運動をいつまでも続けようとする性質があるんだ。これを<慣性の法則>というんだ。だから運動している物体は急には止まれない。とこでもし君が目隠しされていたら、前のめりになった君は、あたかも自分に前方に引こうとする力が生まれたと感じないだろうか」
子「感じるよ。その力も見かけの力なわけだね」
父「実際は同じ運動を続けようとするだけだけど、電車の中で君は自分に何かの力が働いているように感じるわけだ。こうした見かけの力のことを<慣性力>というんだよ」
子「自転車に乗っていてカーブで感じる力も慣性力なんだね」
父「そうだよ。慣性の法則に逆らったときにうまれる力が<慣性力>なわけだね」
子「そうすると、遠心力も慣性力だね。月は真っ直ぐ進みたいのに、無理やり円運動をさせられるから、これに抵抗しているわけだね」
父「まあ、そうもいえるかな。君だって遊びたいとき無理やり勉強させられる抵抗するものね。これは慣性力というより、習慣力かな」
子「そうでもないよ。お父さんとする勉強は楽しいからね。最後に、もうひとつ質問していい? 遠心力がみせかけだとしたら、どうしてそんな幽霊の力に月を地球に落とさない能力があるの」
父「すばらしい質問だね。実はね、月の運動は、見方を変えると、落下運動でもあるんだ」
子「地球の周りを回っているんじゃなかったの? 訳が分からなくなってきたよ」
父「石を水平に投げてごらん。放物線を描いて落ちるよね。石を投げるスピードを上げていくと、石は次第に遠くに落ちるだろう。そこでさらにスピードを上げると、どうなるかな?」
子「石は地表に達するまでに、ずいぶん遠くまで飛ぶと思うよ」
父「そうだね。飛距離がのびるね。ところが、地球は丸いからね。石は重力に引かれて落下するわけだが、その分、地面までの距離もどんどん遠くなっていくよね。そして、あるスピードに達すると、落ちても落ちても地面に届かないということが起こってくる。つまり、石は永遠に地球の周りを<落下>しながら、回転運動を行うわけだ。万有引力を発見したニュートンは月の運動をこういう風に説明しているんだよ」
子「そうか、月は落ちているけど、地球も丸いから、いつまでたっても地面にたどりつかないわけだね。これだと、遠心力なんて考えなくてもいいわけだ」
父「しかし、月が地球に落ちているというより、遠心力をあたかも実在する力のように考えて、これが重力と釣り合っているから<落ちてこない>と考えた方がわかりやすいだろう。つまり、そのものの立場に立って、<力がつりあっている>と考えようとすると、こうした<みかけの力>が必要になるわけだ>
子「地球が自転をしているために生まれるコレオリの力も見せかけなんだね」
父「そうだよ。地球が回転すると、それに従って僕たちも体の方向を変えているんだ。ところが、振り子は慣性の法則にしたがって宇宙空間で方向を変えない。本当はぼくたちが向きを変えているのに、振り子のほうが向きを変えているように見えるんだね」
子「そのため、振り子に何かの力が働いているように見えたわけだね。遠心力やコレオリの力が慣性の法則から生まれた力だということはわかったよ。コマが倒れないのも、慣性の法則で説明できるの?」
父「できるはずだよ。やってごらん」
子「ええと、運動している物体はおなじ状態を続けようとするんだったね。そうか、回転運動でも慣性の法則は成り立つんだね。回っているコマはその状態でまわり続けようとするわけだ。だから、コマは回っている間は倒れないんだね」
父「そうだよ。この性質を利用して作られたのが、ジャイロスコープなんだね。発明者はやはりフーコ先生なんだ。常に一つの向きを示し続けるジャイロスコープのおかげで、飛行機や船が安全に運行できるんだよ」
子「そういえば、お父さんに買ってもらったね。そのとき、お父さんはジャイロスコープのことを地球コマと呼んでいたね」
「そうさ。地球も大きなコマなんだよ。太陽も月もそうだね」
子「でも、どうして、運動している物体はおなじ運動を続けようとするのかな。慣性の法則はどうして成り立つの? 世の中がそんなふうにできているってわけかい」
父「まあ、そういうわけだ。とりあえずはね。しかし、大切なのは、どうしてそんなふうにできているのか、疑問を持ち続けることだね。そうすると思いがけない発見があるよ」
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