橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
| 2004年12月23日(木) |
成果を生む助け合い教育 |
7日に公表された経済協力開発機構(OECD)の国際的な学習到達度調査(PISA)の結果を受けて、日本では「ゆとり教育」を反省し、「週休2日制」の見直しや、「競い合い教育」の復活を求める声が高まっている。
そうした中で、19日の朝日新聞は、「個人の能力に柔軟対応」と題して、全4分野のうち読解力と科学的応用力が1位、数学的応用力が2位、問題解決能力が3位だったフィンランドの教育を紹介している。
義務教育で「世界一」の評価を受けるフィンランドの小中学校では、どんな教育が行われているのだろうか。その秘密を一言で言えば、「落ちこぼれを作らず、一人ひとりの力に目を向けた教育」ということになるという。朝日の記事から引用してみよう。
<ヘルシンキ市中心部に近いクルーヌハカ中学校。ヤリ・アルビオ先生(36)が教える2年生の数学では、1次方程式の基礎を学んでいた。先生が練習問題の答えを説明中だというのに、教室後方の女子が手招きすると、男子が席を立って近寄った。アルビオ先生は何も言わない。このクラスでは、わからないところがあったら、まずは生徒同士が教えることになっている。
「一人ひとりが何ができて何ができないのかを自覚することが大事。出来ない子を教えれば、より理解を深められる」とアルビオ先生。フィンランドでは標準的な考え方だ。
同国には学校や生徒をテストでランク付けする仕組みがない。現行制度では、高校進学に影響する中学3年の成績を除き、成績をつけるための明確な基準もない。
数学が得意だというカッリ・コムシくんは「競争ではなく、自分がやりたくて、できるようになりたいから勉強している。数学が苦手な友達を助けてあげるのはいいこと」と話した。>
<94年に教育の目標や内容の決定権が国から地方に移され、国は大まかなカリキュラムを示すだけだ。学習が遅れた子どもへの特別授業は慣習だったが、06年度から施行される新カリキュラムでは制度化される。・・・・
新カリキュラムでも、教科書の選択を含め、現場の教師が学習内容を決める。アウティオ先生が授業の組み立て方を説明した。
「できるだけ子どもたちの生活と学習を関連させる。国語なら読み書きの正確さより、読んだ文章について考え、感想や意見をどう表現するかに重点を置く」
アウティオ先生のクラスの時間割りには「X」のマークがついている。1週間25時間のうち11時間。この時間はあらかじめ教科を決めず、学習の進み方などにあわせてどの教科に使うかを決めている。金曜日は5時間すべてがXだった。>
ちなみに、フィンランドの7〜14歳児の総標準授業時間は、01年のOECD調査によると、加盟国で最短だという。これを見れば、子供を教室に縛り付け、競争させることで「競争力」を高めようと言う日本の姿勢がまったくの誤りであることは明らかだ。
大切なのは、一人一人の子供の学習意欲を高める「質の高い教育」である。そしてそのためには、教職を魅力あるものにし、良質の教員を育てなければならないが、ここでもフィンランドの方法は、教員同士を競い合わせようとする日本のやりかたとまったく違っている。
トゥーラ・ハータイネン教育相は「教師は修士課程修了が原則。さらに国の予算で継続教育をし、教師の質の向上に努めている」と述べ、次のように続けている。
<教師に大きな裁量があるので、能力の高い人材が必要だ。今後、退職を迎える教員が増えるのでその補充もしなければならない。現状では優秀な学生が大学の教育学部に集まるが、今後は他分野に進む若者が増えるはず。教職をいかに魅力的な仕事にするかが重要だ。給与水準の引き上げ。非常勤講師を減らして終身雇用を増やす。教師の継続的な教育機会を設ける。こうした施策によって将来も優秀な教師を確保したい>
豊かな成果は、教師と教師が助け合い、生徒と生徒が助け合うことで達成される。教師の裁量権を狭め、教育現場に「管理、競争、強制」を持ち込み、「助け合い」ではなく、「競い合わせ」ることでインセンティブを高めようとする日本の教育改革は、今後の日本社会に恐ろしい災いをもたらすことになるだろう。
(参考サイト) http://www.asahi.com/edu/news/TKY200412190095.html
|