橋本裕の日記
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2004年12月20日(月) 超能力と予言

 ユリ・ゲラーは止まった時計を動かして人々を驚かしたが、その種明かしは、意外と単純なことであった。彼は止まっている時計をあたためると、潤滑油が融けて、動くようになるという事実を知っていて、これを魔術に応用したわけだ。

 世の中の超常現象と言われるものも、そのカラクリを明かされてみると、他愛のないことであるばあいが多い。超能力者のほとんどは、私たちとかわらぬ人間である。ただ、自然現象を超常現象だと思わせるトリックを考えるのがうまいだけだ。

 私も人を驚かすのが好きで、小学生の頃は、どうやって人を驚かそうかと考えていたことがあった。ラジオのある端子にイヤホーンを繋ぐと、マイクロホンになるのを知って、あたかも別の部屋にいるように見せかけて、違うところから現れて、祖母や母を驚かせたものだ。こういうトリックは犯罪にも使えるだろう。

 ある意味で、古代の科学者は超能力者としての資格を持っていた。たとえばギリシャのタレス(前624〜前546)は、紀元前585年5月28日に起こった日食を正確に予言している。彼は地球と太陽と月の位置関係を計算してそれを知ったわけだ。

 もしタレスにユリ・ゲラーのような野心があったら、これで超能力者としての自分を売り込めたかも知れない。なにしろ、これは止まった時計を動かすというような無邪気なことではない。

「わしがその気になれば、太陽から光りを奪い、昼を夜にすることもできる。あしたお前達にその力を見せてやろう」

 半信半疑で集まってきた市民達を前に、何か神秘的な呪文でも口に唱え、それらしい身振りをしてみせればよい。そして、時刻になれば、太陽がかけはじめる。あたりが真っ暗になり驚く市民達を前に、「心配するな。わしの力で、再び太陽を甦らせてみよう」と今度は別の呪文を唱えればよい。

 もちろんタレスはユリ・ゲラーではなかった。彼は学者として日食を予言するだけではなく、その生じる理由も論理的にあきらかにした。もちろん、ほとんどの人々は彼の説明を理解できなかっただろうが、それでも日食が自然現象の一部であって、神や悪魔の仕業でないことは理解できただろう。

 タレスは他にもいろいろな逸話を残している。たとえば、人間の影の長さから、ピラミッドの高さを割り出して、エジプト王を驚かしている。彼は影の長さを研究することで、太陽光線が平行であることを知っていた。

 そうすると、影の長さが自分の身長と等しいとき、ピラミッドのみならず、すべての物体の高さがその影の長さに等しくなる。このことに気付けば、すべての物体の高さを容易にはかることができる。

 これは日食の予言ほどむつかしい理屈ではないので、当時の人々にも理解できただろう。そして、太陽光線が平行であるという事実から、人々は太陽が途方もなく遠くにあるということ、そして途方もなく巨大であることを知らされ、「学問」の威力に驚いたに違いない。

 のちにエラトステネス(前275〜前194)は、太陽光線が平行であるということを使って、地球の半径をかなり正確に計算している。タレスは知恵を愛し、魔術師になることよりも、智者と呼ばれることを望んだ。そしてこのタレスから哲学や科学や数学が始まったといわれている。


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