橋本裕の日記
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2004年12月19日(日) なぜ時計が動き出したか

 1974年にユリ・ゲラーが「念力」を使って、止まった時計を動かしたり、スプーンを曲げて見せたりして、日本に超能力ブームを巻き起こした。

 テレビに出演した彼は、止まった時計を動かして見せるので、テレビの前に置くように呼びかけ、大勢の人がこの実験に参加した。じつはこのとき、当時大学生だった妻も、テレビの前に止まった時計を置いたのだという。

 結果は、すばらしいものだった。止まっていた時計が、本当に動き出したのだ。これによって、妻は「超能力」が存在するのだと確信したという。たしかにこれまで長い間止まっていた時計が、突然目の前で動き出したら、びっくりするだろう。

 妻が嘘をつくはずがないので、私もこの事実はみとめなければならない。さらに妻だけではなく、全国の大勢の人が時計が動き出すのを体験し、放送局にその声が殺到したらしい。これで一気に、日本に超能力ブームが巻き起こったわけだ。

 私はもとより「超能力」に疑問を持っていた。スプーン曲げなどは「てこの原理」さえ知っていれば科学的に説明できるので笑っていればよいが、問題は「止まった時計が動き出す」という「超自然現象」のほうである。こればかりは、いくら考えてもわからなかった。

 ところが先日、NHKテレビの「人間講座・だます心、だまされる心」を見ていて、この疑問が氷解した。講師の安斎育郎教授が見事にその謎解きをしてくださったからである。実は、時計が動き出したのは「自然現象」に過ぎなかったのだ。

 寒くなると潤滑油の粘性抵抗があがり、時計が止まることがある。だから、視聴者が暖かい茶の間のテレビの前に時計を置いたとき、そうした原因で止まっていた時計は、やがて自然に動き出す。だから、この手品をするのは、冬の寒い季節に限られる。事実、テレビによる実演も冬だったという。NHKのテキストから引用しよう。

<1974年のテレビ番組の時に時計を持ち出した日本人は一説では1500万人とも言われていますが、そのうちの100万個がそのような単純な原因で止まっており、そのうちの100個に1個が動き出したとしても、全国で1万個の時計が動き出します。

 テレビ司会者が「動いた人は電話して下さい。10台の電話が用意されています」という呼びかけに、10パーセントの人が答えたとしたら1000人が電話しますから、「番組終了後も三時間にわたって電話が鳴り止まない」といった現象がおこりますし、時計が動かなかった1499万人には電話をする資格がないので、かかってくる電話は皆「動いた、動いた」という電話ばかりです。何だか全部動いたような印象がつくり出されるでしょう>

 スプーン曲げにしても、当時のマスコミは「ノーベル賞級の大発見」などと、面白おかしく書き立てた。日本にもスプーンを曲げるエスパー少年が現れて、さかんにテレビでもてはやされたものである。

 私はこうした「超能力」は「種も仕掛けもある手品」の一種だと思って楽しむことにしている。「念力」や「霊」の存在などもまるで信じてはいない。そうした超常現象には人を欺くためのカラクリが隠されているに違いないと思っている。

 この世の中にはもっと驚くべきことがある。スプーン曲げの奇跡には驚かない私も、秋の紅葉の美しさには驚く。様々な生き物がこの地球に存在し、人間のようにものを考える生物までいるということほど不思議なことはない。そして、私たちのまわりの世界が驚きそのものであり、「何一つとして奇跡ではないものはない」のだと思っている。


橋本裕 |MAILHomePage

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