橋本裕の日記
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2004年11月19日(金) 恐怖心をあおる政治

 先のアメリカ大統領選挙で、ブッシュ、ケリー両陣営が費やしたテレビ広告費は、5億7千万ドルを超え、前回の大統領選の2.9倍にも達した。文句なしの史上最高額である。

 広告費はとくに、オハイオ、フロリダ、ペンシルベニアなど激戦区5州に集中し、その総額は3億8千万ドルにも達し、フロリダ州では1週間に計1100回ものテレビ広告が流されたという。

 ケリー陣営は、「米国人が人質にとられ、首を切られています」というナレーションのもと、炎に包まれる車や担架で負傷者を運ぶイラク戦争の映像を流した。これに対し、ブッシュ陣営が放映した番組では、「弱腰は米国を傷つけようと待ちかまえている人々の注意を引いている」というナレーションのもと、狼の群が近づいてくる映像が流され、人々を保守的な投票行動へと駆り立てた。

 ブッシュは大幅に得票数を伸ばしたが、勝因の一つに、こうした有権者の恐怖心を煽り立てる心理作戦があった。人間を行動に駆り立てるもっとも強力な感情は恐怖心だ。これを巧く使って成功したわけだ。

 恐怖心はもっとも原始的な感情で、これに駆られると、人々は現実を見失い、冷静で理性的な判断ができなくなって、容易に盲目的な群集心理に身を任せる。恐怖心は過剰な闘争心と憎悪を生み、過剰な攻撃行動を生み出す。

 ホラー映画や戦争映画もまた、人々の恐怖心をあおる。悪質なデマや宗教も同じである。恐怖心をあおる政治や宗教、娯楽が社会を支配するとき、その社会はとても健全だとはいえない。とくに恐怖心をあおる政治は、想像上の恐怖を現実のものにしかねない。


橋本裕 |MAILHomePage

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