橋本裕の日記
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2004年11月18日(木) 移民問題に揺れるオランダ

「寛容」を合い言葉に、多くの移民を受け入れてきたオランダ社会が、「移民問題」で大揺れしている。発端は11月2日にテオ・ヴァンゴッホという映画監督がイスラム過激派とみられる青年にアムステルダム市内で暗殺されたことだった。

 ヴァンゴッホ監督は2年前ほど前に暗殺された右翼政治家ピム・フォルタイン氏を尊敬していて、イスラム原理主義を批判し、モスリムやユダヤ人を愚弄、侮辱する発言を繰り返していたという。

 監督は自転車で仕事場に向かう途中白昼銃撃され、路上でナイフで刺されたが、彼が仕事場で編集する予定だったフイルムは、凶弾に倒れたピム・フォルタイン氏へのオマージュの映画だったらしい。

 事件後、暗殺への抗議が各地であり、これが移民排斥を訴える右翼団体とイスラム過激派との報復合戦に発展し、モスクやキリスト教会への放火や手流弾の投げ込みが15日までで20件に達した。昨日の「朝日」の朝刊から引用しよう。

<一連の事件の背景には、北アフリカやトルコから大量の移民を受け入れてきたオランダ社会の分裂が指摘されている。オランダのイスラム系移民は、全人口約1600万の約6パーセントに達している。近年、移民受け入れに反対する世論が強まる一方、移民の第二、第三世代の若者の間にイスラム過激派への関心が広がっている>

 オランダは多くの難民・移民を受け入れてきた。しかし、その社会的コストは馬鹿にならない。そこで、最近は認定を制限するだけではなく、すでにオランダに住みついている旧ユーゴ、イラク、アフガニスタンからの難民2万6千人ほどを強制国外退去させはじめた。オランダ社会が大きく変質しようとしているのはたしかだ。

 しかし、事件の背景として、もう一つ忘れてならないことがある。9.11事件以来、アフガン戦争、イラク戦争と続いたアメリカ主導の対イスラム社会への強硬姿勢である。しかも、オランダはアメリカに協力して、イラクに軍隊を出している。こうしたなかで、世界規模の文明の矛盾と衝突が、イスラム人口を多く抱えるオランダ社会を直撃しはじめたわけだ。

 2年前にピム・フォルタイン氏が暗殺されるまで、オランダは150年もの間、政治的暗殺事件がない世界でもとびきり平和な国だった。いま、その誇りが崩れようとしている。バルケネンデ首相は国民に「お互いに対話を続けなければならない」と訴えたが、多くのオランダ国民は困惑し、怒りとやるせなさを噛みしめているという。世界の荒波の中で、「寛容の国オランダ」がどこへ向かうのか心配である。


橋本裕 |MAILHomePage

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