橋本裕の日記
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2004年08月01日(日) 古代ギリシャには緑があった

 ギリシャと言えば、コバルトブルーノの美しいエーゲ海や白亜のパルテノン神殿を思い起こす人が多いだろう。しかし、エーゲ海が青いのはプランクトンが少ないからだ。したがって、海には魚も少ない。海の異常な青さや透明さは、不毛さの象徴でもある。

 それではなぜ、海にプランクトンが少ないのか。それは森がないからだ。裸の大地に降り注ぐ雨はそのまま海に流れる。とうぜん、無機質の水であり、いのちを育む水ではない。

 しかし、ギリシャにも昔はゆたかな緑があった。以前、NHKの番組で、ギリシャの地層を調べていたが、そこから実にいろいろな植物の花粉の化石が検出され、そこに森林があったことが紹介されていた。

 ギリシャの石つくりの神殿も、昔は木でできていたようだ。梅原猛さんはパルテノン神殿もほんとうは木で建てたかったのではないかと書いている。ギリシャ神殿の特徴になっている膨らみをもったエンタシスの円柱は、昔それが木でできていたことの名残だという。

 しかし、パルテノン神殿が建てられた頃のギリシャにはすでに森が失われていたようだ。その直接の原因はペルシャとの戦争である。ギリシャは軍船を作るために多くの材木を消費した。すでにアテネの周辺にめぼしい森林はなかったに違いない。

 森林破壊のもう一つの、そして最大の原因は、農耕と放牧である。ギリシャの緑を滅ぼしたのは大麦とヒツジだという。麦畑やヒツジの放牧のために森林が切り開かれた。ヒツジは草を根こそぎ食べるので、やがて山から緑が失われた。そして緑を失った文明は「略奪」によるしかなくなる。アテネがやがて戦争にあけくれるようになり、そして滅びていったのは、緑を失った文明の必然の運命だろう。

 アテネに代わり、ローマ帝国が地中海に覇権を確立したが、やがてローマ文明も地中海の緑を破壊し尽くして終焉を迎える。スペイン、イギリスがこれに続くがやはり、同様の運命をたどることになった。

 17−18世紀のイギリスは強い海軍力を持って七つの海を支配していたが、軍艦一隻を作るために20haもの林を必要とした。森がなくなり、帆柱につかう大木が確保できなくなるにつれて、イギリスの海軍力が傾いた。イギリスはアメリカなどの植民地から豊富な木材を輸入しようとした。そのためアメリカが開拓され、その森林も17〜20世紀にかけて大きく減少したのだという。

 現在砂漠になっているイランやイラクも、昔は豊かな緑の楽園だった。文明は緑の中で育まれるが、やがてその緑を使い尽くすことで、衰退する運命にあった。パルテノン神殿が建てられてから2千数百年がたっている。二千年後、日本はどうなっているのだろう。その頃の日本人は、かって日本がゆたかな緑の島であったことを知らないかもしれない。

 最後に各国の森林率をあげておこう。かって栄えた国々の森林率の低さが目に付くだろう。出典はFAO (2003) Global Forest Resources Assessment 2000である。

72.0%  フィンランド
65.9%  スゥエーデン 
64,6%  コンゴ
64.3%  ブラジル
64.0%  日本
63.3%  韓国
58.7%  マレーシア
50.4%  ロシア
47.0%  オーストリア
34.0%  イタリア
30.7%  ドイツ
30.2%  ベトナム
29.7%  ニュージーランド
28.9%  ノルウエー
27.9%  ギリシア、フランス
26.5%  カナダ
24.7%  アメリカ合衆国
21.6%  インド
20.1%  オーストラリア
19.9%  ハンガリー
19.4%  フイリピン
17.5%  中国
13.3%  トルコ
11.6%  イギリス
11.1%  オランダ
7.3%   南アフリカ
6.4%   イスラエル
4.5%   イラン
4.2%   エチオピア
3.1%   パキスタン
2.1%   アフガニスタン
1.8%   イラク
0.7%   サウジアラビア
0.3%   クゥエート
0.2%   リビア
0.1%   エジプト

(参考サイト)
http://biodiversity.sci.kagoshima-u.ac.jp/suzuki/ed/demae/yousi.htm


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