橋本裕の日記
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| 2004年07月30日(金) |
IT大国インドの光りと陰 |
ビル・ゲイツが「ビル・ゲイツ未来を語る」を出版したのが1995年だった。この本は世界各国でよまれ、ITブームを引き起こした。私もさっそく買って読んだものだ。
ゲイツが強調しているのは教育の大切さだ。これを自分の体験をまじえながら、説得的に書いている。たとえば、第9章はそのものずばり、「教育は最良の投資」と題されている。これを国家戦略として採用し、成功したのがフィンランドで、みごとに競争力国際ランキングで1位になった。
インドもまた、こうした戦略で成功した例といえよう。インド経済は経済改革の成果で、過去10年間に年平均約6%の安定成長を達成し、2003年には株価は72.9%も上昇し、成長率も8%を越えている。好調な輸出に支えられ、外貨準備高は1000億ドルを越え、日本、中国、ドイツに続き堂々の4位である。経済発展とともに、2億人をこえる中産階級が現れ、インドの市場規模はいまやアメリカにも匹敵しようとしている。
インドのコンピューター教育に費やされる金額は、毎年25%の割合で増加し、専門学校への入学者数は毎年約24%の割合で伸びているという。こうした国と民間をあげてのIT教育戦略のもとで、専門的資格を持つソフトウェア・エンジニアが年間約20万人も誕生している。彼らはインド国内に限らず、米国など多くの先進国でも職を得ることができる。
こうしてインドでは、毎年100万人以上の学生が各種コンピューター・センターに入学し、IT教育は、推定で年間3億万ドルをはるかに越える産業と見なされている。インドのIT教育市場の約30%を占めるアプテク社は、インド全土に約1500のセンターを有し、毎年約30万人の学生を受け入れている。このアプテク社と、やはり大手のNIIT社が、インドのコンピューター教育市場をリードしている。
NIIT社とアプテク社の専門学校は、受講期間が2年から2年半に及ぶキャリア志向用のプログラミング・コースを提供し、『C++』、『Javaスクリプト』、『ダイナミックHTML』、『XML』などのプログラミング言語を習得する。また、各種のウェブ・アプリケーションも多面的に習得する。このコースを受講し、よい成績をあげた学生は、確実によい仕事に就くことができる。
しかし、両社の専門学校のコース受講料は約1500ドルもする。これはかなり富裕層でなければ無理だ。そこで大半の若者はもうすこし授業料の安い小規模の専門学校に殺到することになる。そこでJavaプログラミング、ウェブページ・デザイン、マイクロソフト社の『オフィス』アプリケーション、アニメーションなどをひとまとめにして学ぶことになる。
今やインドは世界一の強力なIT技術者をようし、世界のIT産業の中心地になろうとしている。85ヵ国で20万人を超えるインド人ソフトウェア専門職が働いている。さらに欧米企業の多くがインドのIT企業にアウトソーシング(外注)を始めた。「世界の工場」と呼ばれる中国とならんで、インドはいまや「世界のオフイス」と呼ばれるようになった。
しかし、専門学校で学び、資格を得て、有利な条件で就職できるのは才能に恵まれた一部の若者に限られているのも事実だ。ITブームに湧くインドだが、一方では7億人もの人々が経済発展の恩恵から取り残され、極貧生活を余儀なくされている。5月の総選挙では、絶対有利とみなされていた与党のバジパイ政権が破れるという波乱もあった。
インドの識字率は65.4%(01年国勢調査)という低さである。これからインドがさらに発展するためには、こうした底辺層への教育の浸透をはかることが重要であろう。アメリカ主導のグローバリズムの波に乗って躍進してきたインドだが、貧富の差の拡大をこのまま放置しておくことができない段階に来ていることも事実のようだ。
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