橋本裕の日記
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2004年06月12日(土) 中村医師の怒り

 G8が終わった。小泉首相は他の大統領や首相をさしおいて、ブッシュ大統領と最初の会談をしたことでご満悦のようであった。多国籍軍への自衛隊の参加を早々と確約し、イラクの債権放棄にも応じるなど、あいかわらずブッシュへの忠犬ぶりが目立った。こうしてアメリカ帝国の一翼を担う決意を固めた日本は、これからますます国際的に厳しい状況に立たされるだろう。

 パレスチナでも紛争が激化し、イラクやイランの治安も乱れている。アフガニスタン北西部でも、6月2日、国境なき医師団の医師とスタッフ5人が銃撃で殺害された。アフガニスタンで人道援助をしている中村哲医師のぺシャワール会も活動が難しくなってきている。中村医師が「沖縄タイムズ」(5/30)に寄稿した「現地民から見た米軍」という文章から引用しよう。

<・・・かつて、旧ソ連は「人権・平等と民主化」を掲げ、性急な改革で人々の反感を買い、アフガン戦争を引き起こして二百万人以上の犠牲者を出した。だが、その大義名分と方針は、現在の米軍とほとんど変わりないものであった。

今、現地では、「復興支援」を含めた「外国の干渉」に不信感と反感が深く根を張りつつある。米軍機が上空を通過するたびに、人々は屈辱感と怒りをつのらせてゆく。

「爆弾の雨を降らせといて、『軍隊による人道支援』があるか」というのが、多くの現地民の思いである。その思いは軍だけではなく国連組織やNGOにも向けられ、襲撃事件が相次いでいる。

翻って日本を見れば、戦前の偏狭な国家主義が幅を利かせる「不自由な時代」でさえ、「テロリストの悲しき心」を詠む歌人がおり、堂々と非戦論を唱える知識人もいた。

しかし今、明治人のようなはつらつたる感性が退化したのはなぜだろう。確かに今は言論の自由があり、人権尊重が声高に叫ばれる。特高や拷問もない。

それを考えると、過去の戦争を国家国民挙げて可能にしたのは、「自粛」という名の自己規制と時流への迎合、扇情的な情報操作による国民意識の変容ではなかったろうか。世論と世情はいつの時代でも容易に変化する。そのことが不気味である。

今また、一部新聞の報道によると「アメリカの要請でアフガンに陸自派遣検討」と聞き、心穏やかになれぬ。それが現実化すれば、日本人たる私たちは「米軍の同盟者」として、確実に危険にさらされる。

先人(政府ではない)の努力によって築かれた「親日感情」は危機にひんし、私たちのプロジェクトも崩壊しかねない。だが、国民の命すら左右しかねない「アフガン派兵」は、ほとんどニュース価値がないようだ。>

http://www1m.mesh.ne.jp/~peshawar/pew_oka12.html

また、中村医師は「世界」(6月号)にも、「本当の復興支援とは何か。――アフガニスタン「復興」の現実から見る――」と題してと題して書いている。以下にその紹介文を引用しよう。これもインターネットで見ることができる。

<およそ実像とかけ離れた「正義のアメリカ対悪のタリバン」という認識が「国際世論」を作り、それが米英の報復爆撃を正当化し、罪なき無数の犠牲を生み出したアフガニスタン。日本で行なわれた「アフガン復興支援会議」が明るいムードを演出した後、一件落着の印象を残して、アフガン報道は遠のいていった。しかし、現実はどうか。「統一アフガニスタン」には程遠く、人びとの生活も治安も少しも改善されていない。それどころか、人びとは5年にわたる大旱魃の影響で、飢えの危機にさらされている。

 1984年以来、パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールを拠点に、パキスタンの貧民層、およびアフガン難民の医療支援や灌漑プロジェクトにたずさわる中村氏。その目には、イラクで展開されている自衛隊の「人道支援」は詭弁か茶番にうつる。みずからの20年の経験をもとに、本当の復興支援とは何かを語る。

なかむら・てつ 1946年生まれ。ペシャワール会現地代表。2003年度マグサイサイ賞・平和国際理解部門賞受賞。>

http://www.iwanami.co.jp/sekai/2004/06/directory.html


橋本裕 |MAILHomePage

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