橋本裕の日記
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2004年06月02日(水) 思考力の翼

 ものを考えるということは、この現実から少々「浮き上がってみる」ことだ。それは鳥のように空を飛ぶ感覚にも似ている。小学生の頃、屋根の上にのぼったとき、あたりの見慣れた風景が少し変わって見えた。それは一つの新しい経験だった。

 ガウスは代数学の基本定理など、数々の輝かしい業績をあげて「数学の王様」といわれている。彼が小学生の頃、担任の女の先生が「1から100まで足しなさい」という問題を出した。そうするとガウス少年がすぐに「できた」と言って、石板を持ってきた。

 先生はそんなに早くできると思っていなかったので、たいへん驚いた。しかし、その計算法を知ると、さらに驚いた。ガウスは実は、1から100まで順番に足してはいなかった。およそ次のように考えて、答えを出していた。

1+2+3+・・・・+100
=(1+100)+(2+99)+(3+98)+・・・+(50+51)
=101×50
=5000+50=5050

 小学生の頃から、こうした発想ができるということは、ガウスは天才なのだろう。先生が要求したのは、1から100まで足すことだったが、ガウス以外の少年たちがこれに忠実に実行しようとしたのに対して、ガウスはこれを「計算力」の問題とは考えずに、「思考力」の問題ととらえた。そしてこれはとても大きな一歩なのである。ガウス少年はこの瞬間、「考えること」のすばらしさを実感したに違いない。

 人間は二本の足を持っていて、これで大地を歩く。この足を鍛えて、より早く、より遠くまで歩くことができる。しかし、人間はこの二本の足に加えて、「思考力」という見えない翼をもっている。これを鍛えれば、大空を自由に飛翔することができる。これを怠ると、ほとんど浮き上がることなく、地べたを歩き回るだけの一生になるだろう。


橋本裕 |MAILHomePage

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