橋本裕の日記
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| 2004年05月26日(水) |
「脱アメリカ、入アジア」戦略のすすめ |
2002年の1月、アメリカ大統領ブッシュは,イラン・イラクと並んで、北朝鮮を「悪の枢軸」の1国として名指した。ソ連が崩壊したあと、アメリカに面と向かって立ち向かう国はほとんどなくなったが、例外がこの三国だった。
アメリカはこの3国を本気で潰す気だったのだろうか。イラクについては「イエス」ということだろう。あるいはイランについても、イエスと言えるかも知れない。しかし、北朝鮮については、必ずしも「イエス」と言えないのではないと私は思っている。その理由は、アメリカにとって北朝鮮を潰す理由がないからだ。
アメリカは北朝鮮に反米独裁政権があることで、ずいぶん得をしている。北朝鮮の脅威がなくなったら、誰が一番困るのか。それはアメリカの軍需産業である。日本や台湾に高価な武器を売りつけることもできない。そればかりか、韓国や日本はアメリカ軍の「占領軍」に出ていってほしいと言い出すかも知れない。
現に小泉首相はアメリカのイラク侵攻を支持する理由として、北朝鮮の脅威をあげている。そして、「日米同盟が日本を攻撃しようとしている国に対する大きな抑止力になっている」と言った。裏を返せば、北朝鮮の脅威が取り除かれれば、日米同盟の重要性はかなり低下するだろう。
北朝鮮の独裁政権は、もともと中国やソ連によって作り出され、維持されてきたものだ。そして北朝鮮の存在は、現在でもそれなりに存在意義を持っている。これによって、中国やロシアは自らの存在感を示せるからだ。とくに、日本や韓国に対する脅しとしては、これは格好のアイテムなる。
アメリカにとっても、日本や韓国が北朝鮮と仲良くすることは面白くないことだ。それはアメリカのアジア支配の基盤を危うくすることにつながるからだ。だから、韓国の「太陽宥和政策」には神経を尖らせるし、前回の小泉首相の北朝鮮訪問についても、すぐにケリー国務次官をよこして、「核問題」をネタに日本を恫喝し、これを潰しにかかった。
北朝鮮の独裁政権を作ったのがソ連で、これを育てたのが中国なら、イラクにフセインの独裁体制を作り、これを育てたのはアメリカとイギリスである。北朝鮮と同様に、フセイン独裁体制もアメリカにとって都合の良い存在だった。
それではなぜ、アメリカはフセインを潰しにかかったのか。それはフセインが石油の決算を「ドル」から「ユーロ」に切り替えたからだ。これによって、米国債が多量に売られることになる。日本が急遽、140兆円ものドル買いの枠をもうけたのも、実はドルからユーロへの転換で、多量の米国債が売りに出されたときの備えではないかと思われる。
アメリカはイラクに独裁政権を作り出すことで、サウジやクエートに「脅威」を与え、これを自国のコントロール下におくことが出来た。しかし、こうした分断による支配というアングロ・サクソンお得意の狡猾な支配戦略を今回は放棄して、むきだしの力による方法に走った。
日本の場合は公共事業だが、アメリカはこれまで戦争で経済を維持してきた国である。この世から独裁政権がなくなったら、一番困るのが世界の警察官を自任しているアメリカだろう。しかし、今回はフセインをつぶしにかかった。それはそれだけアメリカが余裕を失って、追いつめられていることを示している。これは世界にとって、あまりよい兆候とはいえない。
こうした現状認識に立って、日本は進むべき道を冷静に切り開いていかなければならない。アメリカの戦略にそって、あくまで北朝鮮敵視政策を続けるのか、それとも北朝鮮を積極的に援助し、これと融和的な関係を創造していくかである。私は後者の選択こそ、賢明な道だと思う。拉致問題を根本的に解決するには、一日も早く両国が平和条約を結び、国交を回復することである。
日本は明治維新以来140年間「脱亜入欧」を合い言葉で走ってきた。第二次大戦後は、むしろ「脱亜入米」というべきかもしれないが、そろそろこれを逆転させて、「脱アメリカ、入アジア」、さらに視野を広げて、「脱アメリカ、入ユーラシア」の発想に立ってはどうだろうか。私にはこれが21世紀のグローバル社会に生きる日本の正しい選択のように思われる。
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