橋本裕の日記
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2004年05月13日(木) 非対象な差別の世界

 イラクで拘束された今井紀明さんが、週刊現代(5月22日号)で、旧知のジャーナリストのインタービューに答えて、拘束事件の真相についていろいろと書いている。ちょと以外だったのは、拘束された3人が拘束者と物怖じせず議論をして、高遠さんなどは「ファック、ユー」などと随分過激な言葉を使っていたということだ。

 今井さんの体調が悪くなると、彼らは毎日5回のお祈りに加えて、今井さんたちの体調がよくなるように祈ってくれたそうだ。同じ拘束者と言っても、米英軍に拘束され、拷問や虐待を受けたイラク人とは雲泥の差である。

 考えてみれば、イラク人が西側の民間人を拘束すれば国際世論が盛り上がり、連日大騒ぎするくせに、その何千倍ものイラクの民間人が拘束されていても、国際世論はほとんど問題にしてこなかった。私たち日本人も、こうした非対称性を「差別」だと意識することが少なかったように思う。

 国際ジャーナリストの浅井久仁臣さんによると、拘束者を裸にして性的虐待を加えたり、冬に冷水風呂に入れたり、部屋に不快な音楽を流して長時間眠らせないでおいたりするのは、イスラエル軍がパレスチナ人にこれまで行ってきたものと同じで、イスラエル軍はこれをそっくりナチスから学んだのだという。ナチスの亡霊がいまだにこんなところで生きているとは、なんともおぞましいことである。

 閉所恐怖症の私は狭い空間に閉じこめられるだけでパニックに陥り、精神狂乱になりそうである。写真で多くの拘束者がかぶっていた頭巾も、4重、重に縫われた厚い布で、悪臭が付けられており、息をするのも苦しいものらしい。パレスチナ人のなかには、これを一週間以上被せ続けられた者がいたらしい。私なら1時間ともたないだろう。

 今回の米軍によるイラク人虐待事件を最初にとりあげたのは、電子版「ニューヨーカー」だった。記事を書いたハーシュ記者は、やはり「ニューヨーカー」に、1968年に南ベトナムのソンミ村で米軍が約500名の村民を皆殺しとした事件もスクープして、ピューリツア賞を受賞している。

 事件を内部告発した兵士といい、まだまだアメリカにも健全な良心は残っている。ソンミ村虐殺事件が「ニューヨーカー」で報じらると、アメリカで反戦に気運が高まり、これが呼び水となって米軍のベトナムからの撤退が実現した。今回もまた、アメリカでの反戦気運がもりあがって欲しいものだ。


橋本裕 |MAILHomePage

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