橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2004年05月01日(土) 最大多数の最大幸福

 このところ株価もあがり、失業率も改善するなど、日本経済の景気の回復が目立ってきている。企業はリストラを経て、投資や雇用を再開し、家計も消費を増やしているようだ。トヨタなど輸出産業を中心に、空前の利益を計上する企業もでてきた。

  実質経済成長率は03年の2.7%からさらに伸びて、今年は4%を超えるのではないかという観測もでている。1%そこそこだったバブル崩壊後の長期低迷を脱して、日本経済にもようやく本来の明るさが戻ってきたようにも見える。

 日本経済復活の要因は、リストラによる企業改革や銀行の不良債権処理が一段落ついたことに加えて、中国市場の活況やアメリカ市場の堅調な消費動向が上げられている。いましばらくはこうした要因は続くと見られるから、日本経済の伸びも続くだろう。あるいは4%台の成長率も夢ではないかも知れない。

 こうした高成長が続けば、企業の利益もふくらみ、賃金も増えて、政府の税収も伸びるかも知れない。財政が好転すれば、国債発行にも歯止めがかかる。巨額の公的負債を平和的に返済するという展望も拓かれるだろう。

 しかし、私は4%の成長率が持続可能だとは思えない。それは巨額の財政赤字をかかえるアメリカ経済の先行きが不透明だからだ。アメリカ経済が破綻すれば、中国が稼ぎ出している巨額の貿易黒字も縮小せざるをえない。日本経済がこうした不安定な外需に依存しているかぎり、どうしてもその先行きは不安にみちたものになる。第二、第三のバブルが生まれるだろうが、すぐに弾けて、さらに長い停滞をよぎなくされるだろう。

 もう一つの問題は、景気が上向きになったといっても、それは平均的な統計値で見た範囲のことである。たとえば平均値は上がっても、所得格差が生まれていれば、私たち庶民の多くはその恩恵に浴することが出来ない。こうしたことがアメリカや中国で顕著に現れているが、日本も次第にそうした方向に社会が分極化していくことが考えられる。私はこれが日本の将来にとって望ましいことだとは考えない。

 私はむしろ一部の富裕層による経済支配ではなく、「最大多数の最大幸福」(ベンサム)を追求するのが正しい経済政策ではないかと考えている。これはまた、不意安定な外需に頼るのではなく、国民の福祉と文化を増進させる中で内需を拡大させ、人々がほんとうの「ゆたかさ」を実感できる社会を実現する道である。

  経団連会長奥田碩氏(トヨタ自動車会長)は「死にものぐるいで成長を実現せよ」(文芸春秋新年号)と呼びかけ、そのかいあって、トヨタ自動車は578万台もの車を販売し、04年3月期にはとうとう連結純利益が日本企業としてはじめて1兆円をこえた。これが日本経済の復活を象徴するものとしてテレビや新聞で大きく報道された。

 しかし、この日本を代表する巨大企業の成功を支えるために、日本政府は円高の阻止の名目で1年間で30兆円もの米国債を買うはめになった。それだけではない。アメリカ市場に経済を依存する日本政府は、アメリカが求めてきた50億ドルのイラク支援金の拠出と、日本がもつ70億ドルのイラク債権の放棄をあっさり了承している。

 この120億ドルという援助金は第一次湾岸戦争のときの拠出金にせまる額で、もちろん世界の中で日本は突出している。そしてここがかんじんなところだが、「死にものぐるい」で達成したトヨタの1兆円という利益をも吹き飛ばしてしまったということだ。経団連会長が絶叫し、小泉首相があとおしする「成長優先主義」が日本と世界をどこに導くか、私たちは立ち止まって、もう少し冷静に考えてみようではないか。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加