橋本裕の日記
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2004年04月25日(日) 各国の思考法で見るイラク戦争

 一昨日、それぞれの国に特徴的な思考スタイルの話を書いた。そこで今日はこれをイラク戦争での各国の対応にあてはめてみよう。まずは戦争を始めた張本人のアメリカはどうかというと、イラクにある大量殺戮兵器を廃棄し、世界とアメリカをテロの恐怖から守るためだということだった。

 その後、アメリカは大量破壊兵器がないとわかると、イラクをフセインの圧政から解放するためだとか、イラクを民主化するためだとか、戦争の大義名分を次々と変えていったが、その根底にある思考法が、「実利主義」であることが容易に見て取れるだろう。

 もっともこの実利なるものが、そうとうにいかがわしいものであることは言をまたない。アメリカのため、イラクのため、世界の平和のためといいながら、その実、ブッシュ政権が基盤とする石油ビジネスや兵器ビジネスの利益のためなのである。だから、このことが分かっている人はイラク戦争に反対する。

 さて、次はアメリカとともにイラク戦争の一翼を担ったイギリスである。イギリスは「実証主義」の国である。戦争を始めるにあたって、何よりも重視したのが、イラクが大量破壊兵器を持っているという事実であった。イギリス政府はイラクがウランを購入したという証拠書類を見つけ、これをアメリカに送った。他にもさまざまなもっともらしい証拠を示してブッシュを助けた。イギリスの「実証主義者」としての面目躍如といったところだろう。

 ところが、今日ではこれらの証拠がすべてイギリス政府がでっちあげたニセモノだということが分かっている。つまり、イギリスの「実証主義」もずいぶんいかがわしいものだったわけだ。そしてとうとう、ブレア政権は「偽証罪」で問われる羽目になっているわけだ。「実利主義」のアメリカは、独裁者のフセインをやっつけたのだから、偽証なんてたいしたことではないとうそぶいている。しかし、イギリスにとっては、その実証主義の看板がはげ落ちたわけだから、ダメージは小さくない。

 次ぎに、アメリカ、英国に追随したスペインやイタリアや日本はどうか。これらの国の思考法は一口に言って、「権力追随主義思考」である。世界の覇権国家であるアメリカに協力せよと言われた以上、これを拒否することはできない。こうした強国についていれば、まずまちがいがないだろうという考え方である。

 第二次大戦のときにドイツについたのも、当時ドイツが世界一の強国に思えたからだった。しかし、第二次大戦でドイツは破れ、イタリアや日本の思惑は完全に裏目に出た。今回のイラク戦争でもアメリカは苦戦している。スペインは鉄道爆破テロを機会に方向転換した。日本は自衛隊をイラクに派遣したものの、イラクの治安は日毎に悪くなり、人質事件まで起きてしまった。イタリアはとうとう人質が殺されてしまった。それでも、イタリアも日本もアメリカを支持し続ける。この「権力追随主義」がふたたびこれら両国を破局へと導かないとはかぎらない。

 これに対して、フランスやドイツはイラク戦争に反対した。「論理主義」のフランスは国連の承認のないイラク戦争が国際法の手続き上許されない違法行為であると噛みついた。また、「理想主義」のドイツは、そもそもアメリカの覇権主義がまちがっているとして、武力ではなく、人道的な支援の重要性を訴えた。

 こうしてみると、今度のイラク戦争は「実利主義」「実証主義」「権力主義」に対する「論理主義」「理想主義」の戦いで始まったわけだ。しかし、アメリカとイギリスの「実利」「実証」がそもそもインチキだということも次第に明らかになってきた。現在の局面は、アメリカの「覇権主義」と、これに追随する勢力に対する、「実利」「実証」「論理」「理想」主義の戦いと言ってよいだろう。


橋本裕 |MAILHomePage

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