橋本裕の日記
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以前の日記で、2月6日に名古屋で行われたペシャワールの会の集会に参加した話を書いた。この会はアフガンでもう20年以上にわたり医療活動や、井戸掘り・灌漑工事をしているNGO(国際協力に携わる市民組織)である。
そのとき、現地を訪れた会員の報告では、自衛隊がイラクに派遣されてから、アフガンでも活動がむつかしくなってきたということだった。それまでは日の丸を掲げての活動だったのが、自衛隊の派遣を機に身辺の安全に不安を感じることが多くなり、日の丸を隠して活動するしかなくなったいという。イラクで頻発する武装勢力による人質事件を耳にするたびに、アフガンで活動している彼らのことが心配になる。
ペシャワール会の現地代表である中村哲さんの「医者井戸を掘る」(石風社)を読むと、2000年にアフガニスタンを襲った未曾有の大飢饉を前にして、それまで現地で17年間医療救助活動をしていた中村哲さんたちが現地で井戸を掘り始めたときの失敗談がいろいろと書かれていて、ほんとうに試行錯誤の連続だったのだということがわかる。
そうした困難を、ただ「水がなければ人が死ぬ」という危機感と不屈の意志で乗り越えていった中村哲さんたちペシャワールの会の活動はすばらしいと思った。何しろ医者が畑違いのことをするのだから、うまくいくはずがない。そこにアフリカのセネガルで井戸掘りをしていた中屋伸一さんが助っ人として現れた。
中屋さんはもともとはコンピュータ製造会社で重きをなしていた人だという。長い間勤めた会社を辞めて熱中しだしたのがこうした辺境の地での「井戸掘り」だった。4ケ月間、中村さんたちと寝食をともにして井戸掘りの技術指導をしたあと、彼はまたセネガルにひとり旅だった。中屋さんのモットーは「もっと困ったところへ」で、中村哲医師は彼についてこう書いている。
<我々の方からすれば、アフガニスタンは最も急迫した状態に思えたのだが、中屋氏にとってはセネガルがより困難な状態にあったのである。・・・まったくの侍である。白黒をきちんとつけた上で、言ったことは必ず黙って実行した。愚痴や言い訳が皆無であった。古風な日本の男として、私も何かと頼りとしてきた。消えつつある最後の日本人の一人である。去り際も風のごとく爽やかで、ただ「立派」という以外に言葉がない>(医者井戸を掘る)
こうした中村哲さんたちペシャワール会の活動について、地元の人たちを代表して村の長老が語った言葉が印象的だった。
「皆さん、世界には二種類の人間があるだけです。無欲に他人を思う人、そして己の利益を図るのに心がくもった人です。私たちはあなたたち日本人と日本を永久に忘れません」
中村哲さんや中屋伸一さんのような立派な日本人が今もアフリカやアフガンで寝食を忘れて人々のために尽くしているのだろう。彼らのことを考えると、何かしら心が熱くなる。ペシャワール会のHPの文章を紹介しておこう。
<2000年7月からアフガニスタン国内の診療所で大干ばつによる水不足を原因として、赤痢患者が急増しました。そこで、同年8月より、医療活動の一環としてアフガニスタン東部一帯で水源(井戸・カレーズ)確保事業を開始し、空爆下も休みなく続けてきました。
2002年1月に、「緑の大地」計画を発表、これまで継続してきた、医療活動・飲料水源確保はそのままペースを落とさず、さらに灌漑用水の確保に力を尽くし、自給自足できる農村の回復によってアフガニスタンが復興されるよう、さらに長期的かつ大規模な事業を目指して努力しています。
2003年3月、水量の豊富なクナール水系の水を利用した灌漑用水確保15カ年計画がスタートし、全長14キロメートルの用水路建設を進めています。
○作業地数:1132カ所、利用可能水源1057カ所(2004年2月現在) ○水利関係臨時雇用職員:140名、労働者700名(2003年現在)>
ペシャワール会は800名以上のアフガニスタン現地人を雇用して、彼らと彼らの家族の生活を保障しながら、彼ら自身の力で井戸を掘らせ、大地を緑にする活動を押し進めている。現在までに1000本以上の井戸を掘り、砂漠に緑をもたらし、何百万という難民が帰農することを助けた。これだけのことが、現地にいるほんの数名の日本人と彼らを支える数千人の日本人会員によってなしとげられてきたわけだ。
ここで、給水活動について書かれたひとつの資料を引用しておこう。ペシャワールの会のようなNGOの活動と、イラクでの自衛隊の鳴り物入りのものものしい活動を比較してみることで、今後に向けて復興援助のあり方が問い直されると思うからだ。
*自衛隊の給水能力は、80トン/日 *民間NPOの給水能力は。1000〜2000トン/日 *そのためにかかる自衛隊の費用は500億円弱⇒反対者も含めての税金 *民間NPOの費用は1億円(年間)⇒賛同者のカンパ *自衛隊の給水活動従事者は派遣隊員の1/10 *民間NPOの給水活動従事者は採用された現地人⇒失業者対策もかねる
どんな大河も、その始まりは一滴の水だ。その一滴の水に、もう一滴が寄り添うところから、すべてが始まる。そして大切なのは、私たち一人一人がその一滴一滴になる覚悟があるかどうかということだろう。
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