橋本裕の日記
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2004年04月14日(水) あと知恵で批判するのをやめよ

 捕虜になった3人の日本人の行動が無謀で、国益をそこなうものだという批判が、いまものすごい勢いで起こっている。北海道の東京事務所には「3人の家族に事務所を使わせるな」という電話が100本も殺到しているとか。3人とその家族を誹謗中傷するe−メールや掲示板の書き込みが、いたるところで増殖しているようだ。

 そしてこれを助長するような政治家や官僚の発言が続いている。たとえば、自民党の額賀政調会長は講演で、海外危険地域について現在は「退避勧告」を出すまでしかできないのを、「強制的渡航禁止」できるようにする法改正を検討したいと発言した。

 これでは報道の自由が奪われ、実際に行われていることを隠蔽しようとする権力の横暴を許すことになりかねない。そもそも政府が「退避勧告」を頻発するのは、それによって政府の責任のがれになるからだ。そのことがわかっているので、これまでほとんど無視されきたわけだし、また、これを無視しなければできないことがたくさんある。

 さて、私の管理する掲示板でも人質になった3人の行動に批判的な意見が寄せられているが、私は3人の行動が軽率であり、無謀であったということは、人質になった今だから言えるのであり、いわゆる「浅はかな後知恵」でしかないと思っている。

 3人が拘束されたのは7日から8日にかけてと考えられるが、この頃から、他にも外国人がぼちぼち拘束されはじめ、しかもその数はその後、急速にふえてきている。武装勢力が外国人を拘束しはじめた背景には、その数日前に始まったアメリカ軍のファルージャ掃討作戦に対する対抗手段だったと考えられている。この作戦で600人以上のイラク人が殺害されたそうだ。これに全国のイラク人が急速に反米へと傾いた。

 それまではイラクの武装勢力は民間人を人質に取るという戦略をもっていなかった。したがって7日の時点では、3人を含め、ほとんどだれも、まさか彼らが武装勢力に拘束されるとは考えなかったはずだ。ただ、紛争地域のまっただなかに飛び込むので、双方の戦闘にまきこまれ、負傷したり命を奪われる危険はかなりあっただろう。そして彼らにとってこうしたことは、承知の上での行動だと思われる。

 浅井久仁臣「国際情勢ジャーナル」によると、現在私たちがテレビで見ているいる現地からの日本の局特派員やジャーナリストの報告は、ほとんど「東京発」の情報だそうだ。つまり、「日本の本社が外国報道機関から得た情報を向こうに送り、それをTVカメラの前で読ませている」のだそうである。

 もちろん、現地入りしている人のなかには、危険を省みず、戦闘の現場を取材し、自らの体験に基づいてレーポートしている人がいる。そうした人たちは大組織の社員ではなく、ほとんどが個人のフリージャーナリストで、そうした人の情報が本社に入ると、それを本社は現地に伝えて、あたかも現地レポートのごとく世界に報道しているわけだ。

 組織に属している人は、人命尊重という建前もあり、容易に動くことが出来ない。政府が発する「退避勧告」という建前も無視することができないから、これは仕方のないことかも知れない。こうした中で私たちが戦争の真実をまがりなりにも知ることが出来るのは、一部の人々の危険を省みない真実追究の姿勢があったからだということも事実だろう。もし彼らが政府の「退避勧告」にしたがっていたら、世界は真実を知ることができず、戦場はおそるべき暗黒の修羅場になっていたはずだ。

 もし、今回3人が無事バクダッドについていたら、彼らから世界はファルージャの現在について、貴重な証言を得られたかも知れない。その証言はどこかの大手報道機関の「現地レポート」として私たちのお茶の間にも届いていたことだろう。おそらく、その証言の内容は「イラクの民主化」の名の下に文事ヘリコプターやミサイルを使って「住民の虐殺」を日常化しているアメリカ軍や、「復興人道支援」の名の下に「アメリカの占領政策支援」を続ける小泉首相さんにとっては、とても都合の悪いものだったかもしれないが。

 昨日の朝日新聞によると、オランダ軍の前にサマワに駐屯していた米軍人9名が体調に異常を来し、陸軍病院で検査を受けたところ、劣化ウランの成分が6人から検出されたということだ。今、イラクで劣化ウラン弾による健康被害が広がっているが、これはイラクに派遣された自衛隊にとっても他人事ではないはずだ。今井紀明さんはこの問題に関心を持ち、現地の現状を人々に報せたいと考えていた。そしてこうしたことはリスク覚悟でしかできないことだ。

 繰り返しになりるが、大切なことなのでもう一度書く。武装勢力に拘束された3人の行動を「あと知恵」で批判するのはやめようではないか。今は、一刻も早い3人の解放と、イラクの戦闘で日々失われている人命がこれ以上ふえないために、アメリカ軍に戦闘行為の自粛をもとめよう。不幸にして人質になった3人の日本人の行動を非難する人たちは、何がイラクをこうした悲惨をもたらしたのか、その本質にもう一度目を向けてほしい。


橋本裕 |MAILHomePage

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