橋本裕の日記
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2004年04月13日(火) すばらしい日本人たち

 7日にイラク武装勢力に拘束された3人はいまだに解放されず、その安否が心配である。しかし、今度の事件を通して、私は色々なことを考え、いろいろな発見があったと思っている。そのなかでも、3人のすばらしい日本人について知ることができたのは、何よりもの収穫だった。今日はその中の一人、高遠菜穂子さんを紹介しよう。

 高遠菜穂子さんは30歳を機に、北海道千歳市のカラオケ店を閉め、インドに渡って、マザー・テレサが設立した施設でボランティアとして働き、昨年4月からは一人でバグダッドで戦争孤児の支援を始めた。小さなアパートを借り、路上生活に追いやられた子どもたちと一緒に暮らした。

 高遠さんは今年日本に一時帰国し、イラクの戦争孤児を救済するための募金活動を行い、そのお金をもって、4月1日に日本を離れた。自衛隊がイラクに派遣され、さらに米軍のファルージャ掃討作戦が行われ、イラク人達の反米、反日感情が高まる中で、それでもバクダッドに向かったのは、バクダッドを立つ朝、「菜穂子はぼくらの母さんなんだろ」と泣き出しそうな子どもたちに、「4月に戻る」と約束していたからだという。

 テレビで紹介されたイラクの子供たちと接する高遠さんの様子をみると、ほんとうに子供たちに慕われていることがわかる。戦争の惨禍のなかで両親や兄弟を失った孤児たちはストリートチルドレンとなり、シンナーに溺れて、荒んだ心をしている。そうした子供たちを抱きかかえ、そして唇に接吻する高遠さんはまさに慈母観音のようだ。高遠さんは、かってバクダッドから友人にこんなメールを送っていた。

「みんなが大好きで、私が彼らに守られているのだということを、彼らが私に私のことを教えてくれているのだという事実を感じています。場所は関係なく、地球人として私は彼らとつながっていた……そう思わずにいられません。そのくらい、私のイラクは愛しいものです」

 高遠さんと一緒に拘束された今井紀明さん、郡山総一郎さんの生き方もすばらしい。彼らは国というせせこましい枠にとらわれず、特定のNGOにさえ属せず、まったく個人で自由に活動していた。そしてその行動を支えているものは人々に対する一途な「愛」である。

 事件発生当初、「米国に協力する日本からの者はすべて米軍と同罪」と突き放すような意見が大半だった。アラビア語のテレビ各局が目隠しをされた3人の姿を繰り返し流しても、バグダッドで同情論はほとんど聞かれなかった。それがテレビでこの3人の活動が紹介され、解放を求める家族のビデオが放送されてから、バクダッド市民の日本に対する見方が変わり始めたという。朝日新聞から引用しよう。

 「180度考えが変わった。人質が我々の友人だとわかり、胸が痛んだ。自衛隊も民間日本人も、みんな米軍協力者との見方が変わった。人道援助をする民間人と軍隊を同一視するのはよくない。3人の速やかな解放を心から希望する」(弁護士のアルカン・モハメドさん)

 「テレビで人質の家族を見て涙が出た。特に女性人質は娘と年齢も近く、母親の心中を思うとたまらない。イラク人のために働く人々に危害を与えてはいけない」(主婦ゼイナブ・アリさん)

 この3人の愛情と勇気に満ちた行動が、いま、イラクの人々の日本に対する認識さえも変えつつある。イラクの人々ばかりではない。世界の人々が彼らに賞賛をおしまないだろう。このことを私は同胞として誇りに思う。この上は、このすばらく輝いていた3人が、一刻も早く無事に解放され、その輝きで世界を再び明るくしてくれる日が訪れることを祈りたい。


橋本裕 |MAILHomePage

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