橋本裕の日記
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| 2004年04月08日(木) |
米国債の購入をやめよ |
日本政府は巨額の米国債を所有している。経済不況が長引き、年金の破綻が心配されるなかで、米国債の売却の是非について、ようやく新聞でとりあげられるようになった。たとえば2月16日の日本経済新聞に「豊さの実感」と題して安藤茂彌氏が書いているので、一部を引用しよう。
<健康保険も大幅赤字である。長生きする人が増えたのでこの赤字が止まらない。そのために、自己負担額を増やさざるを得ない。雇用も不安定になり、所得が増えず、年金受領額が細る中で、こうした負担増は将来への不安に拍車をかけている。
こうした国民の不安感を尻目に、小泉首相は他国への支援には大盤振る舞いをしている。諸外国に先駆けて米国のイラク戦争資金を50億ドル(5000億円)も支払い、イラクが日本に負っている公的債務41億ドル(4100億円)の放棄にも応じる構えでいる。英国以外の欧州各国は米国から要請されても難色を示している。日本国民を苦しめながら、米国からの要請には寛大である。そんなに日本は金持ちなのであろうか。
日本は、長年にわたって貿易黒字で貯めたお金を豊富に持つ世界最大の債権国である。その規模は数百兆円に上り、その大半をドル資産として持っている。小泉首相は、ドルならば大盤振る舞いできる。だが、その富は日本国民に帰属する。円であれドルであれ、国民の富であることにかわりはない。
・・・このところ米国財政収支の悪化も著しい。イラクで巨額の戦費を使った上に、減税も実施した。その財源となる国債の発行も膨大な規模にのぼっている。日本は従来から米国債の最大の保有国である。日本政府は、昨年から急激な円高を阻止するために、外為市場に介入してドルの買い支えを続けている。今年度だけで20兆円を超えた。介入で得たドル資金でひたすら米国国債を購入してきた。こうして投資額は更に増え、いまや日本がアメリカ国債の3分の1以上を保有するダントツの投資国になってしまった。
政府が管理しているドル資産は、永久に手をつけてはいけない箪笥預金なのだろうか。円であってもドルであっても富は富である。年金が赤字ならば、米国国債を売って穴埋めすればよい。健康保険が赤字ならば、米国国債を売って穴埋めすればよい。こうした議論が何故日本国内で起らないのだろうか。国会もマスコミも富の管理に関する政策を追及しようとしない。これはタブーなのだろうか>
財務省が7日に発表した3月末の外貨準備高は8265億7700万ドル(約87兆円)で、とうとう8000億ドルを超えた。外貨準備の資産内訳は、証券のほか、預金が1802億ドル(全体の約20%)、金が104億ドル(同約1.2%)だという。
外貨準備高はこの 一年間で何と3300億ドル(約35兆円)も増加してる。これは政府・日本銀行は昨年度、32兆円の記録的な円売りドル買い介入を実施したからだ。米国の04年度(03年10月〜04年9月)の財政赤字は5210億ドルに達する見込みだというから、米国の財政赤字の多くを日本が米国債を買うことで補填していることになる。
こうしたカラクリにについては、「経済学入門」に書いたとおりだが、米国債の売却について、日経も海外在住の安藤さん(元三菱銀行横浜支店長)の投稿を掲載することで、ようやくこのタブーに挑戦したという感じだ。この流れを歓迎したい。これを端緒にして、米国債についてのタブーが破られ、議論や批判が起これば、政府も巨額の購入にたいして慎重にならざるを得ないだろう。
4月3日の朝日新聞によれば、政府・日銀は3月中旬以来、為替介入を自粛しているらしい。その理由は巨額の為替介入で円安に動くことを米政府が嫌ったからだという。朝日新聞から引用しておこう。
<今秋の米大統領選を控え、円安ドル高による輸出企業への影響を懸念する米政府内の反発を踏まえ、政府・日銀は「大統領選の材料として日本批判が高まる可能性を排除する必要がある」(政府関係者)と判断。足元の円高も、外国人投資家の日本株買いに伴う要因が強く、投機色が薄らいだため、巨額介入の必要性は当面ないと考えたようだ。
また、介入に必要な円資金は政府短期証券(FB)を発行して調達するが、残高は約84兆円(3月末現在)に達し、さらに発行が増えれば、市場での消化が難しくなる。円売り介入で得たドルで運用している米国債の評価損も膨らみ、こうしたリスクを無視できなくなったことも介入を慎重姿勢に転換させた。>
為替介入で日本マネーがアメリカに流入し、これが日本に環流して、日本の株価を押し上げている。日本の株式取引においては、約半分が外国人投資家によって占められていて、この1年間に14兆円以上も日本株を買い越している。この結果、昨年度中の平均株価は約47%上昇し、約30年ぶりの高い上昇率を記録した。
しかし日本に資金が流れ込み、日本の株価が上がるということは、日本からアメリカに出た資金がふたたび日本に環流するということであり、つまりアメリカへの資金の流れがやせ細るということだ。じっさい、このところアメリカの株価は伸び悩んでいる。 こうした背景の中で、スノー財務長官の「政府はできるだけ介入すべきではない」との発言がでてきたのだろう。 米高官の発言で政府・日銀が為替介入をただちに停止したのは、やはり外圧に弱い日本政府の面目躍如というところだろうか。アメリカ政府も大統領選が終わればまた態度を変えるだろう。イラクの戦費が膨らんだりすればすぐにでも米国債の購入を要求してくるかもしれない。そうでなくても、外国資本による日本株式の買い占めがすすむということは、外資による日本金融支配の強化というリスクがある。日本政府がふたたび外圧によって安易に心変わりをしないことを祈りたい。
(参考サイト) http://www.nikkei.co.jp/tento/trend/20040216n472g000_16.html
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