橋本裕の日記
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2004年03月29日(月) 初秋

38. 障害者のいる店

 注文を取りに来た若い女の子は、たぶん知的障害をもっているのだろう。そのほか、ダウン症たど思われる青年が客にケーキを運んでいた。レジの前の年輩の女性は車椅子に坐っている。高橋文子をのぞけば、店員はだれもが障害を持っていそうだった。

 修一の会社にもかって障害者がいた。それは障害者雇用促進法という法律で、日本の企業は常用者の1.8%にあたる障害者を雇用しなければならないと定められているからだ。修一の会社は300人近い社員がいたから、五人か六人雇えばいいことになる。

 もっともこの比率を守れない企業は、不足人数一人につき月額5万円を国に納めればよかったので、ほとんどの企業はこちらをえらぶ。身体障害者、知的障害者の雇用率はそれほど高くないはずだ。そんな話を、葉子にした。

「お詳しいのね」
「いやね。商品開発部から今の部署に配置転換になるまえに、人事部にまわされたんだ。そこはすぐに辞めたけどね」
「まあ、どうして?」
「毎日首切りをする人間のことばかり考えなければいけないわけだ。それにうちの会社は10人ほど障害者を雇用していたんだが、これも全員解雇しなければならなかった」

 修一は人事部に籍を置いていたのは、わずか一ヶ月にも満たなかったが、そのあいだに、大規模なリストラがあった。それが終わったところで、修一は商品管理部へ転属になった。人事部を辞めたというより、任務が終わって、辞めさせられたというのが正しかった。しかし、修一の中では、「辞めた」という意識が強かった。

「人の首を切るのなんて、いやな役ね」
「そうだね。しかし、会社が生き残るにはそれしかないからね。生存競争に勝つためには、仕方がないんだよ」
「でも、このお店はいいわね。みんな気持ちよさそうに働いているもの」 

 たしかに、店員の表情が明るかった。障害者をこんなに雇って、それでも採算があうのか不思議だった。たぶんパートでやとっているのだろうが、いったいどのくらい時給をもらっているのだろう。高橋葉子がきたら、そのあたりのことも訊いてみたかった。


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