橋本裕の日記
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2004年03月27日(土) 減税と戦争

 アフガン、イラクでの武力行使が続き、貿易赤字が4000億ドルをこえるなかで、ブッシュ政権は株式配当課税の撤廃などを柱とする10年間で約6700億ドル規模の大減税を押し進めている。減税の目的は「景気対策」だというが、クルーグマンによれば、これには全く別のねらいが隠されているという。

<ニューヨーク・タイムズ紙のダン・アルトマンが指摘するように、政権の一連の減税案は事実上急進的な右派が長年抱いてきた目標を達成しようとするものである。つまり、資産からの収入に対する課税をすべて排除しようとする動きである。それは賃金だけが課税されるシステムで、言い換えれば働いて得た収入は課税されるが、働かずに得た収入は課税されないというシステムなのである>(嘘つき大統領のデタラメ経済)

 クルーグマンは「公表されている政策目標がどうであれ、それだけで政策の意図が理解できると思ってはいけない」という。共和党の右派指導者たちは、景気が悪かろうが良かろうが、そんなことはお構いなしに、こうした資産家のための減税を押し進めようとしていた。「景気対策」というのは、その表向きのプロパガンダにすぎない。

<その本当の目的が何だったのかを把握することは別に難しいことではなかった。私が先に指摘したように、ラディカルな保守派は資本に対する課税の廃止を長年唱えてきた。実際、それがブッシュ政権が達成しようとしている目的である。したがって政策の真の目的を理解するには、その政策が国民一般に提案される以前に、それを立案した人々が何を達成しようとしていたかを探ればいいのである。これが何が起こっているかを理解する一般的な方法である>(同上。以下も同じ)

 どうようなことが、戦争についてもいえる。9.11テロが起こり、「テロとの戦争に勝利するため」ということで、アフガン戦争を始めた。さらに、イラクが「大量破壊兵器」を持っているということで、イラク戦争をはじめた。しかし、その真の目的は何かということはまた別である。その証拠に、戦争の理由がころころと変わっている。

<イラクとの戦争は、当初、アルカイダとサダム・フセインとの繋がりで正当化されていた。しかし、大変な努力にもかかわらず、そのような関係を裏付ける証拠は見つからなかったため、今度はサダムの核疑惑がその理由とされた。核疑惑によって、イラクとの戦争は正しいのだと穏健派の多くに思い込ませることができ、下院はブッシュ大統領の侵攻計画に青信号を与えたのである>

<だが、徐々にイラクの核疑惑は信用されなくなった。・・・・イラクがニジェールからウランを購入したという文書も、下手な偽造でしかなかったことが明らかになっている。しかし、その頃になると、ブッシュはイラクに民主的な政府を樹立することで、アメリカは中東地域に民主化の波を起こすことができるふうに訴えるようになっていた>

 ブッシュ政権の元テロ対策担当者、リチャード・クラーク氏は、24日に米議会の同時多発テロに関する独立調査委員会の公聴会で、次のように証言している。
「ブッシュ政権にアル・カーイダの危険性を何度も警告したが重視されなかった」
「9.11の直後、『イラクとの関連を見つけろ』と大統領から言われた」
「同時多発テロを聞いてすぐ、『イラク攻撃をすべきだ』とラムズフェルド国防長官は主張した」

 二日目の24日の証言では、クラーク氏はまず「同時テロ発生を防止しようと努力したが失敗した」と謝罪した。その上で、ブッシュ政権は「テロを重要だが、緊急ではない問題と考えていた」と述べ、脅威の認識が不十分だったと改めて批判し、「イラク侵攻で合衆国大統領はテロとの戦いを弱体化させた」とも主張している。こうしたクラーク氏の証言は、日本ではほとんど報道されないが、ヨーロッパではいずれもブッシュ政権の根幹を揺るがすものとして第一面で大きく報じられている。

<アメリカ人が何が起こっているかを見つめ、いかに善意と愛国心が利用されてきたかということを理解した時こそ、この国で一番大切なものが破壊されていくことを阻止できるかもしれない。いつ、そしていかにその時が訪れるのか、私には分からない。しかし、ひとつだけ明らかなことがある。それはアメリカ人全員が何が起こっているかという真実を見つめ、真実を伝える努力をしなければ、それは起こらないということである>

 クルーグマンはアメリカについて語っているわけだが、それはそのまま、日本にもあてはまることだ。この国でも「一番大切なもの」がいままさに、小泉政権によって破壊されようとしている。そして、これを阻止しようと思ったら、私たちはその「構造改革」という美名に隠された欺瞞をあばき、「真実」を伝える努力を惜しんではならない。

(注)ポール・クルーグマンは1953年にニューヨーク州に生まれている。マサチューセッツ工科大学教授、スタンフォード大学教授などをへて、現在はプリンストン大学教授。大統領経済諮問委員会の上級エコノミスト、世界銀行やEC委員会の経済コンサルタントを歴任した世界的な経済学者で、将来のノーベル賞候補に目されている。

(参考文献)
「嘘つき大統領のデタラメ経済」 ポール・クルーグマン、早川書房 2004年


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