橋本裕の日記
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| 2004年03月26日(金) |
アメリカのハートランド神話 |
アメリカ大陸の中心部に位置し、比較的農村部の多い州のことを、ハートランドというらしい。進歩的な両海岸の都市部に比べて、このあたりは伝統的に保守的な人々が多い。テキサス州出身のブッシュもハートランド人と言っていい。
ハートランドには「古き良きアメリカ」があり、独立心と自尊心に富んだ、「真のアメリカ人」がいるといわれる。ブッシュ大統領がテキサス州のクロフォードにある農場を訪れるのも、「真のアメリカ人」に触れるためだと言っている。しかし、2002年2月にニューヨーク・タイムズに載ったクルーグマン教授のコラム(「嘘つき大統領のデタラメ経済」に所収)をよむとこれがいささかあやしい俗説に過ぎないことがわかる。
たとえば離婚率はニュージャージーよりもモンタナの方が60パーセントも高い。私生児の率や殺人事件の起こる割合も、じつは沿岸部の進歩的な州よりも古き良きアメリカといわれるハートランドの方が高い。家族的価値や個人のモラルにおいて、むしろハートランドに厳しい統計ばかりが目につく。
さらにハートランドが受けている援助は毎年900億ドルに達していて、とても独立心、自立心に富んでいるとはいえない。 たとえばモンタナ州の住民は連邦政府に払った税金の1.7倍もの補助を受けているという。つまりハートランドの人々は、より生産性の高い豊かな都市部の人々の援助によって家計をささえているわけだ。
<ニューヨークの議員達が200億ドルの援助資金を勝ち取るのに、いかに苦労したか覚えているだろうか。テロで打撃を受けた街の再建のためにすでに約束されていた資金だったにもかかわらずだ。それなのに最近、議会は農業に従事する人々に、今後10年間にわたって1800億ドルもの助成金を出すことを決定している。ニューヨークの人口は、アメリカ全農業人口のほぼ2倍にあたるというのに>
なぜハートランドがこうした特別の扱いを受けているのか。クルーグマンはそれはアメリカの選挙制度の結果だという。たとえば上院議員の半数はハートランド州の出身だが、人口にするとたった16パーセントに過ぎないのだという。
クルーグマン教授のコラムを読んでいると、これはそのまま日本にあてはまることに気付く。都市と農村の格差はいづれの国にもある。そしてそれがさまざまな政治問題を生んでいることも同じである。一票のもつ重みは万人に平等であることが望ましいが、この理想を実現するための方策となると、なかなか容易ではない。
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