橋本裕の日記
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2004年03月21日(日) 好かれる人

 10年ひと昔というが、もう15年も前のことなので、書いてもいいだろう。離婚した同僚のSさんのことである。職員旅行で温泉に行ったとき、宿での雑談おり、年下のAさんが「どうも夫婦の関係がよくない。先輩、何かアドバイスをください」という。

 そこで同じ部屋の3人の先輩が代わる代わる夫婦和合の秘訣を語ることになったのだが、その中で、Aさんが一番期待したのが、Sさんの答えだった。なにしろSさんの奥さんはとびきりの美人で頭も良い。夫婦仲もよく、二人の子供を連れてよくでかけるらしい。

 そのSさんの答えはとても単純明解で、ずばり「セックスで満足させる」というのだ。「SMとかもするの」という冷やかしの問いかけに、Sさんは真面目そのものの表情で、「あたりまえだよ。なんでもするんだ。一生懸命、誠意を尽くしてがんばるしかない」と、だんだん悲壮な表情を帯びてきた。

 Sさんの美人の奥さんを知っていた私は、おもわず卑わいな空想をして、にやにや笑って聞いていたが、みるとAさんは真剣に耳を傾けている。Sさんに聞かれるまま、Aさんはいろいろと夫婦生活の内情を告白し、「そんなことではとうていだめだ」というSさんのアドバイスに何度もうなずいていた。そしてAさんばかりでなく、私たちもSさんの気迫に押されて、「明日からがんばってみようか」という気になってきた。

 ところで、これには二つの後日談がある。一つは無事Aさんが夫婦の危機を乗り越え、その後も幸せな夫婦生活を続けているというハッピーエンドであり、もう一つはそれから1年もしないうちにSさんの美人の奥さんが、幼稚園児の二人の子供を置いたまま家を出て、とうとうSさんと離婚してしまったということだ。

 Sさんの離婚の真相はわからない。しかしSさんはすっかり元気をなくし、別の高校へ転勤してしまった。うわさでは、向こうの職場でもしょぼくれてるということだったが、それからしばらくして、Sさんが再婚したという話がとびこんできた。なんでも職場結婚で、相手は若い英語の教師だという。そしてすっかり元気になったSさんは、また持論を復活させて、しっかりがんばっているらしい。

 Sさんはどうしてそんなにもてるのか。小柄で痩せていて、風采も上がらず、これという取り柄などとくにない男だが、それだけに一緒にいて、何となく安らぎがもてる。こちらのプライドや自我が傷つくこともなく、日溜まりの縁側に寝ころんでいるようで、居心地がいい。おそらく、それは女性も同じで、とくにプライドの高い女性にとって、彼は普段着の自分をさらけ出せるくつろぎのベンチであり、やすらぎのベッドなのかも知れない。

 しかし、それでは何故、彼は離婚したのだろう。ある友人の説では、「がんばりすぎたせいだろう」とのことだが、これはばかりは本人に聞くわけにもいかず、いまだに謎である。

 一般に、人から好かれるには、次の三つの戦略があるといわれている。
�.好拭爾砲覆襦兵�分の優秀さを見せつけて、尊敬させる)
�▲曠好函Ε曠好謄垢砲覆襦並佚�な立場で話をよく聴き、共感する)
��コメディアンになる(自分を低くして、滑稽なことをいい、優越感を与える)

 ��はピエロのようで淋しいし、�,脇段未丙庸修坊辰泙譴覆じ造蝓△覆�なか大変だ。お薦めはいうまでもなく�△離曠好函Ε曠好謄浩鑪�であろう。人に好かれる要素は、ルックスや優秀な頭脳ばかりではない。むしろそうしたもろもろの美点は、人を安心させない。むしろ多くの場合、警戒心を与え、人を遠ざけ、敵をつくる。私たちの人生に必要なのは、さまざまなことに共感し、心の通いあう、ごくふつうの隣人なのである。

 私がSさんから学んだのは、「セックス戦略」ではなく、この「ホスト・ホステス戦略」である。おかげで、私たち夫婦はとても円満で、よき友人である。よき友人でしかないところが、ちょっとさびしいのではあるが・・・。


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