橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2004年03月16日(火) 政治的公正とは何か

 1985年10月7日から「ニュースステーション」が始まった。久米宏、小宮悦子、朝日新聞編集委員の小林一喜、東京銀行のサラリーマンから転じた若林正人。私は今はほとんどテレビは見ないが、10年くらい前までは、よくみたものだ。ニュースステーションも定番の一つだった。

 久米宏はスタート当初から「中学生にでもわかるニュース番組を」というポリシーを持っていたという。「さて」「ところで」といった決まり文句は使わず、あくまで自分の言葉で簡潔に表現する。むつかしい専門用語もわかりやすい話し言葉でポイントを押さえた解説する。地図やグラフを多用するが、統計の数字もたんなる羅列に終わらせず、その意味をはっきりさせて、イメージがもてるようにする。論点を絞り、明解さを心がけて、結論を曖昧にしない。そしてその姿勢はあくまで、「権力」に批判的である。

 「ぼくは、社会党が政権を取ったら、アンチ社会党になりますから。これは間違いないです。共産党が政権取れば、アンチ共産党です。だいたいマスコミが政権と同じところに立ったら、めちゃくちゃですから、その国は。なぜ反自民かというと、政権を取っているからです。それ以外には、理由はないですね」(「アサヒ芸能」1992年5月14日号)

 久米のこうした姿勢は当然、権力の側の反発をうむ。放送法には「政治的公平、報道は事実を曲げないですること」といった規定がある。特に「政治的公正」ということで、ニュースステーションは何度もやり玉に挙がった。

 総選挙期間中の昨年11月4日、民主党の影の内閣の名簿が発表されると、ニュースステーションは20分かけてとりあげた。自民党がこれに怒り、「放送倫理・番組向上委員会」に審理を申し立てるとともに、テレビ朝日の番組への出演拒否を宣言。11月9日の開票番組には自民党執行部ばかりか公明党執行部までもが出演を拒否するという異常な事態になった。

 2月19日、広瀬社長が謝罪し、役員を含む関係者の処分を行ったが、自民党はいまだに執行部役員の出演拒否を続けている。そうした中でテレビ朝日は民主党の議員の学歴詐称や秘書疑惑について、他の民放よりもかなりの時間を割いてこれを詳細に報じてバランスをとり、「政治的公正」の基準を満たそうとしている。これについて、カルフォルニア大学のロナルド・モース教授(日米関係論)がこんな発言をしている。

「アメリカのメディアは政治的な立場をはっきり打ち出すが、日本のメディアは中立であるフリをして、裏では違う。日本独自の記者クラブは国民に本当の情報を流さず、むしろ国民に情報を流さないシステムになっている。政府や政治家が記者クラブを通じて情報をコントロールするからだ。日本国民ほど自分の国と世界で本当は何が起きているかの真実を知らされていない国民はいない」(「週刊ポスト」2004年3月12日号)

 久米宏自身は、「テレビは嘘だらけ」「テレビで事実を伝えるなんて不可能だと思ってます」と常々公言している。「政治的公正」という建前のもとで、何が行われているか、それは270名もの郵政官僚が放送局に天下っていることからもあきらかだろう。この3月で18年間続いた久米宏のニュースステーションは終焉を迎える。巨大メディアから、またひとつ庶民派の番組が消えていく。自民党も「テレビ朝日」も、さぞかしほっとしていることだろう。
 
(参考サイト)http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/index.html


橋本裕 |MAILHomePage

My追加