橋本裕の日記
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| 2004年03月13日(土) |
アメリカのハゲタカ戦略 |
私は大学・大学院で物理を勉強した。高校の教師になってからは生物や化学、数学も教えている。というわけで、どちらかというと私の頭は理系にできている。理系の頭というのは、論理的・実証的にものごとを考えるということだ。
さらにもうひとつ理系的な思考の特徴をあげれば、現象の背後にあるものを探求しようとすることだ。たとえば気象異常が生じた場合、何故それが起こったのかを追求する。そして、異常現象が起こるしくみを明らかにしようとする。
自然現象の背後には、その現象を生じさせているカラクリが存在する。論理的・実証的な方法で、そのカラクリを明らかにすることが、つまり自然科学が行おうとしていることだ。たとえばニュートンはリンゴが地面に落ちるのに、なぜ月は落ちないのか、そのからくりを明らかにした。アインシュタインはなぜ太陽が何十億年ものあいだ輝き続けることができるのか、そのカラクリをあきらかにした。このカラクリを知ることによって、人工衛星が生まれ、原子力発電所や原子爆弾が誕生した。
同様の探求は経済現象や社会現象にも適用することができる。マルクスは「資本論」でみごとに資本主義社会のカラクリを暴いて見せた。ケインズはなぜ、恐慌が起こるのか、その仕組みを解明し、これを克服する手段を提示した。
カラクリを知ることで、私たちはなぜそうした現象が起こるのか理解することができる。理解という言葉は、英語でアンダースタンディングというが、まさに現象の背後にあってこれを支えているものという意味である。「理解」によって物事が起こってくるしくみが分かれば、これをどう変えていったらよいかということも分かってくる。
現在の世界経済は、米国債本位制というドル環流システムのもとで動いている。これはアメリカがベトナム戦争を乗り切り、共産主義陣営との冷戦に勝利するためにつくりだした世界支配のしくみである。そしてこのしくみは冷戦が終了したいまも健在で、ますます歯車の回転を加速させようとしている。
しかし、米国債本位制は今、曲がり角に立っていることも事実だ。ひとつには、これによってアメリカやその忠実な同盟国である日本の財政赤字がとほうもなく膨らんでしまったことである。このまま突き進めば、いずれ近いうちにアメリカも日本も国家破産することになる。
もちろん、こうした最悪のシナリオは回避しなければならない。そこで、つぎにこの危機を回避するためのシナリオ(戦略)を発動させなければならない。そのシナリオとは、デフレ経済のもとで不良債権を増大させて、日本の銀行や生命保険会社をつぎつぎと破綻させ、これをアメリカの銀行の支配下に置くというシナリオである。つまり、こうすることで、1400兆円の日本の個人金融資産をまるごといただこうというおいしい作戦なのだ。これによって、少なくともアメリカは国家破産を免れることが出来る。
アメリカのこうした危機回避シナリオが着実に進行していることは、たとえば「りそな銀行」のケースを見ればあきらかだろう。2003年5月17日、ブッシュ大統領も訪日を9日後に控えたこの日、小泉首相はりそな銀行への2兆円規模の公的資金注入を決めた。政府はこうして経営権を握り、不良債権を処理して身軽にした上で、アメリカのハゲタカファンドに二束三文で売り渡すわけである。
その先例はいまや十指にあまるが、代表的なのは2000年2月に4兆円あまりの公的資金を注入された日本長期信用銀行(現新生銀行)や2000年8月に3兆5千万円を注入された日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)だろう。前者はリップルウッドホールディングス、後者はサーベラスというアメリカのハゲタカファンド(投資会社)に二束三文で売られている。アメリカのこうしたハゲタカ戦略についてわかりやすく書かれた森永卓郎さんの近著「庶民派経済学」(実業之日本社)のなかから引用しよう。
<1998年に金融危機に陥った韓国では、GDPの3割にもおよぶ公的資金を注入し、金融再編を行った。そして、最終的には6大銀行のうち5つが、過半の資本を外資に握られる事態に至った。竹中大臣が中心になって策定された金融再生プログラムは、この韓国の金融改革を手本にしていると言われる。だとすれば、りそな銀行の実質国有化は、日本のメガバンクが外資の手に落ちて行く、ファーストステップだと評価できるのではないだろうか。・・・5月に行われた日米首脳会談で、ブッシュ大統領は終始、上機嫌だったと伝えられている。小泉首相の手土産を、ブッシュ大統領は心から喜んだに違いない>
こうしたアメリカの戦略は、もちろん日本政府とりわけ「日銀」の協力がなければ成り立たない。また森永さんによると、驚くべき事に、アメリカのハゲタカファンドには日本の資本がかなり入っているのだという。つまり日本の政官業の三者がアメリカと共謀して、こうした日本売国戦略をおしすすめているわけだ。日ごろ何かというと愛国心や道徳の必要を説く彼らのこの常軌を逸した行動をどう説明したらよいのか。明日の日記で、その謎の真相に迫ってみよう。
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