橋本裕の日記
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2004年03月11日(木) 米国債をためこむ日本

 このたび「経済学入門」のデーターを2002年のものに更新した。おもに総理府統計局の数字に頼ったが、作業をやりやすくするために、「各種統計」というホームページを作り、リンク集に入れておいた。インターネットを使えば、即座に必要な統計が得られるわけで、データーの更新もそれほど手間がかからない。

 しかし、中にはどうしても手に入らない統計があった。それがアメリカ国債の残高である。「経済学入門」には9兆ドルと書いた。改訂版を出すにあたって、この数字の信憑性を検証したいと思ったのだが、これはどうしてもわからなかった。その理由はアメリカ政府が公式に発表していないからである。

 以前、この日記で紹介した世界開発協力機構(OECD)の統計によれば、2002年の政府債務残高のGDP比は、日本が156パーセント、アメリカが65パーセントになっている。これによれば、アメリカのGDPは10.4兆ドルだから、

 40.4×065=6.76兆ドル(744兆円)

 ということになる。これは国際機関の正式な数字だから、まあ、最低でもこのくらいはあると考えられる。日本の公的債務残高が6.2兆ドルだから、額にするとアメリカの方が多いことになる。日本はこのうち、1/3にあたる2.2兆ドル(245兆円)から3兆ドル(330兆円)ほどを所有していると推定される。

 今年1月26日に米議会予算局は2004会計年度(2003年10月-2004年9月)の財政赤字が4,770億ドルに達するとの予想を発表した。ブッシュ大統領はイラク戦争で巨額の支出に加えて、2001年から13年間で1.7兆ドルという巨額の減税プランを計画していて、米政府の予想でも、2004ー13年度の累計財政赤字は2.4兆ドルへ増加するという。

 アメリカは財政赤字とおなじ5000億ドルもの貿易赤字(経常赤字)を出している。これらの双子の赤字を日本が米国債や株を買うことで埋め合わせている。2003年度には日本政府は20兆円もの為替介入をしたが、同じ規模の民間資金もアメリカの国債や株に投資されたと考えられる。

 2003年12月に政府はドル買い介入に必要な短期国債の発行枠を61兆円も上積みして、140兆円にした。国家予算が81兆円なのに、それを上回る資金を使ってアメリカ国債を買うつもりだという。おどろいたことに、日本のマスコミも野党もこれをほとんど問題にせず、すんなり国会で承認された。こうして日本はこれからもアメリカの巨額な赤字をほぼ無尽蔵に補填していく体制を確立した。

 こうしたアメリカの経済戦略はすでに1971年に金本位制が廃止されたときから始まっている。アメリカはベトナム戦争を続けるために厖大なドルを印刷して戦費をまかなわなければならない。そのために金本位制から「米国債本位制」に移行し、これを同盟国に買わせてドルを回収する必要があった。ビル・トッテンは「脱アメリカが日本を復活させる」(徳間書店、2000年)でこう書いている。

<カラクリとしては「財務省証券」、つまり米国債が使われる。これは、いわばアメリカの借金証文である。たとえば、日本がバブル崩壊寸前の好景気にあったとき、アメリカは日本に際限なく米国債を買わせた。そして日本のバブルが崩壊したとき(実はこれもアメリカの仕業なのだが)、アメリカは米国債の売却に応じない、つまり借金を返そうとしなかったのである。日本など勝手に苦しんでいればよいというわけだ>

<それどころか、いまもこの米国債を日本に買わせ続けている。簡単に言えば、いくら日本国民が必死に働いても、それで得られるお金は、片っ端から米国債に変えられていく。日本人の懐には、その余り程度のお金しか入ってこない。そして、日銀の金庫には、役ににも立たない米国債が堆く積まれている>

<アメリカは日本に、日本が輸出で稼いだドルで米国債を買わせる。これで、アメリカにはドルが環流したことになるわけだ。だからドル環流政策という。なぜ日本国民が、アメリカ人に豊かな生活をさせるために働かなくてはならないのか。不思議な話だというしかない>

<ヨーロッパ諸国には、なぜ日本がここまでアメリカに従順なのか、理解できないのである。だから、日本はアメリカと組んでヨーロッパを脅かそうとしている、としか思えない。実際、日本がやっていることは、結果としてそのとおりのことなのだ>

<日本は、国民の生活を犠牲にしてまで、せっせとアメリカに貢がされている。この構図に甘んじている限り、日本はアメリカに経済占領されている、と言われても仕方がないのである>

 ビル・トッテンによると、こうしたアメリカの新戦略を見抜いて世界に警告を発したのが、1972年に出版されたマイケル・ハドソン博士の著書「Super Imperialism:Economic Strategy of American Empire」だった。しかしこの本は出版するとすぐに売り切れて、人々の手には届かなかった。アメリカ政府機関が買い占めたからだ。そして、米国防省はマイケル・ハドソン氏を雇い入れた。その後、日本の出版社がこの本を翻訳して出版しようとしたとき、アメリカ政府は出版社に圧力をかけ、本の出版を中止させた。米債権本位制によるドル環流政策を続けたかったからだろう。

 今日、アメリカの戦略は金融自由化を中心とするグローバリゼーションの名のもとに、さらにパワーアップしている。それは日本を完全にアメリカの経済支配のもとにおき、米国債という紙屑同然の借金をチャラにする企てなのだが、それを小泉首相は「構造改革」と呼んでいる。それがどんなに空恐ろしい未来をもたらすものか、日本人はほとんど知らない。実は知らないのではなく、知らされていないのである。明後日の日記で、アメリカが日本の官僚や政治家、一部民間優良企業のエリートを抱き込んで、どんな企てが行われつつあるか、その巧妙なカラクリについて書いてみよう。


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