橋本裕の日記
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総理府の「労働力調査」によれば、2002年、新規採用した雇用者数は354万人もいるとのことだ。しかし、このうち、正社員は40パーセントに満たない139万人で、のこり60パーセント以上が非正社員になっている。
非正社員の内訳をみると、パート・アルバイトが174万人、派遣社員が7万人、契約社員・嘱託が23万人などをあわせて354万人である。これをみると、日本の労働人口が全体として減少する中で、正社員から非正社員へと構造改革が進んでいることがわかる。
なお新規雇用者の多くは転職者で、転職者だけでみると、正社員の比率はさらに低下して、32パーセントにすぎない。つまり転職しても正社員として採用される確率は1/3に満たないということだ。この結果、雇用者全体にしめる正社員比率がどんどん下がっている。2002年には70.7パーセントで、翌年は69.7パーセントと7割を切っている。転職者の多くが占めるサービス業でみると、59パーセントしかない。
この結果、なにが起こっているかというと、賃金の大幅な低下である。たとえば、2002年度の平均年収は、40歳台後半の正社員だと高卒で658万円、大卒だと893万円である。彼が転職した場合、一番考えられるのはサービス業の非正社員として働くことになるわけだが、その場合は平均収入は143万円に過ぎない。実に1/6も下がってしまう。たとえ彼が運良く正社員になれたとしても、その場合も年収の半減はさけられない。
小泉首相の「構造改革」は、正社員の非正社員化をとおして、所得格差と賃金破壊を生み出している。そしてこの傾向はこれからますます拡大し、アメリカ型の競争社会を生み出していくだろう。それはつまり、ほんの一握りの経済的勝者のために多くの人が低賃金と失業の恐怖を余儀なくされる社会である。日本は確実この方向に動いている。
自殺者は1998年以来、3万人を超えている。実はこの年、はじめて失業率が4パーセントを超えた。自殺者の数は、失業率に比例している。そして年代でみると、2/3以上が失業によって一番打撃を受ける50歳以上である。この年代では自殺の動機のトップが借金苦などの経済問題である。
人口10万人あたりの自殺率を見ると、日本人は24.1人で、これは6.1人のイタリアの4倍もある。イタリアの国民一人あたりの所得は日本の1/2でしかない。ヨーロッパ全体でみても、所得はざっと日本の6割り程度である。しかし、厚生労働省の統計で見ると、日米とヨーロッパでは年間の実労働時間に大きなひらきがある。製造業でみると、日本1970時間に対して、フランスが1589時間、ドイツ1525時間と、その時間差はおよそ450時間、56日分の格差である。
この格差がどこから生まれたかというと、「職と賃金を奪い合う日米」と「職と賃金をわかちあうヨーロッパ」に違いである。競争型社会と共生型社会のちがいだと言ってもよい。不景気の時は職をみんなで分かち合い、労働時間を減らし、そうして得た自由時間で余暇をたのしみ、ボランティアに参加する。そこにはGDPの統計にあらわれないほんとうの豊かさがある。「競争もって貴し」とするか「和をもって貴し」とするか、そのいずれが人間を幸せにするか、日本人はいま一度立ち止まって考えてみるべきだろう。
(参考文献)「庶民派経済学」 森永卓郎著 実業之日本社2004年刊
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