橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2004年02月10日(火) 家計からみる日本経済

 一昨日の朝日新聞の書評欄を読んでいて、「家計からみる日本経済」(橘木俊詔著、岩波新書)を知った。東大教授の松原隆一郎さんが、「一変する経済観、実感こもる政策提言」と題して、わかりやすく解説している。一部引用しておこう。

<エコノミストの話は理屈をいじるばかりで実感に乏しいと言われる。その理由のひとつに、家計を起点として景気対策や生産活動、一国のゆたかさなどを論じてこなかったことがある>

<いざ家計に焦点を当てると、金融システムや企業の劣化ばかりが伝えられた日本経済の光景は一変し、政策提言にも実感がこもる。これはそんな本だ>

<日本の最低賃金は国際比較でも下位にあり、それ以下しか支払われぬ人も10パーセント存在する。そればかりかその最低賃金は、生活保護支給額をも下回っている>

<年金・失業・医療・介護などの社会保障費は、税に比して再配分に与える効果が十数倍もあるのに世界最低水準で、福祉は企業と家庭が担ってきた。日本は「小さな政府」である。>

<一部大企業では、中年雇用者が過酷な長時間労働を強いられている。90年代からのデフレで企業は売り上げ不信に陥ったと言われるが、企業が関係する卸売物価は80年代半ばから下がり続けている>

<ここから、斬新な提言が出てくる。雇用不安や社会保障への不信から、家計は景気に与える影響がもっとも大きい消費を抑えている。それゆえ70年代と同様、労働時間を失業者と分かち合い雇用を増やして人心を安定させ、煩雑な社会保障制度は一本化して信頼を回復させよう。ビジネスの街・東京に機能を集中させるだけではなく、行政・文化・住みやすさなどで地方分権すべきだ、と。賛成だ>

<社会保障の主な財源を税にしようなど、議論を呼びそうな提言もあるが、そもそも成長率ばかり追い求めぬ経済を作ろうというビジョンが骨太だ。なぜ視点を移しただけで、主張が小泉内閣とこうも異なるのか。じっくり考えてみよう>

 ここに書かれていることは、私がこの5年間、この日記で書いてきた主張と完全に一致している。日本を変えて行くのは生産者中心ではなく、こうした生活者を起点にした経済学であろう。さいわいなことに、こうした視点で書かれた私の「経済学入門」や「共生論入門」を出版する話も進んでいる。橘木俊詔さんの原著もじっくり読んで見たい。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加