橋本裕の日記
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20世紀の後半50年間をみると、世界の人口は25億人から60億人へと2.4倍になっている。この間、穀物の生産量は3倍に、食肉生産量は5倍に増加した。科学技術が発達し、品種改良がすすみ、化学肥料が大量につかわれて、稲、麦、トウモロコシの世界三大穀物の生産量が飛躍的に伸びたためだ。
こうした「緑の革命」のおかげで、穀物は量的には足りているが、世界には一日1ドル以下の生活を強いられて飢えている8億もの人々がいて、しかもその数は増え続けている。それは大量の穀物が飼料として、牛や豚や鶏に大量に与えられ、その肉や卵を私たちが大量に食べているからだ。1kgの牛肉を生産するには、7kgもの穀物が必要だという。
世界の穀物生産量は年間約20億トンで、日本人の穀物消費量は1石(150kg)と言われていたが、今は60kgぐらいしか消費していない。その分、肉などを食べているわけで、それも含めて穀物に換算すると、一人当たり年間約300kg以上になる。しかしさらに上を行くのがアメリカ人で、彼らは約900kgも食べている。
先日放映されたNHK教育テレビの番組によると、もしアメリカ人と日本人が5回に1回だけ牛肉を食べるのをやめれば、この地上から飢えがなくなる計算になるそうだ。トウモロコシ6億トンの内、4億トンが家畜の飼料となっているが、この一割あまりをこうした人々への食料にまわせば、世界の飢餓は解決できる。
同じNHKの番組で、アメリカとインドの荒廃した農地が紹介されていた。「緑の革命」で大量に収穫する必要から大量の地下水を汲み上げた結果、地下水が枯渇し土壌が砂漠化し、塩分が浮き出して真っ白になっていた。インドのパンジャブ地方に住む老農夫が、その荒涼とした白い土地にたたずみ、「ここにはかって豊かな穀物がみのっていました。私が年老いたように、土地も又年をとってしまいました」と悲しそうに語っていたのが印象的だった。
ウイリアム・コスグローブ博士は、「川に集まる水よりも多くの水を使い、数千年かかって蓄えられた地下水を穀物生産のために数年で使い切ってしまっている」という。実際にアメリカの中西部にあるオガララ滞水層の水位は15年間で12mも低下してしまった。このため灌漑農業に頼ってきた農地が次々と放置されているという。
人間が1日に飲む水は2リットルに過ぎない。しかしそれ以外に、散水やトイレなど、生活用水として多量の水を使っている、日本人の場合その量は322リットルにもなる。これはアメリカの425リットルよりは少ないが、ヨーロッパの280リットル、アジアの132リットル、アフリカの63リットルよりは多い。
緑の革命によって飛躍的に増大した人口を養うだけの穀物生産が今後可能かどうか、自然破壊がすすむなかで疑問視されている。現に穀物生産高は1983年をピークにして減産気味だが、これは水不足や土壌砂漠化がおもな原因と見られている。
狂牛病や鳥インフルエンザの流行も人為的な環境破壊の影響が大きい。人類の文明はいま、大きな曲がり角にさしかかっている。自然の発している警告に私たちはもっと注意深く耳を傾ける必要がある。アメリカと並んで大量消費文明の最先端を走り続け、しかも穀物の70%以上を輸入に頼っているっている日本には、世界の将来に対する責任と義務がある。
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