橋本裕の日記
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2004年01月30日(金) 初秋

23.葉子のアパート

 葉子と喫茶店の前で別れるつもりだったが、ふと出来心が湧いた。葉子を「さと」へ連れていこうと思ったのだ。
「さと子の店で、食事でもおごらせてくれないか」
「食事をおごって下さるんですか」
 葉子の声が弾んでいた。
「いつも親友の世話をしてもらっているからね」

 タクシーを拾って、「さと」にいくつもりだったが、葉子はアパートに寄って、着替をしたいようだった。病院の勤務で汗をかいている。シャワーも浴びたいという。
「歩いて5分です。すぐにすませますから」
 並んで歩きながら、葉子は恐縮したように言った。
 
 葉子は三階建てのモルタルづくりのアパートの二階に住んでいた。修一はアパートの入り口で足を止めた。
「どうぞ、いらして下さい」
 外で待っているのもかえって人目に付くかもしれない。葉子に促されるままに、中に入った。

 居間のソファに腰を下ろすと、キッチンで葉子がお茶の用意をするのを眺めた。他にもう一部屋ある2KDの間取りだった。若い女性のお城らしくきれいに片づいている。
 ベランダの方に目を向けると、洗濯物が干してあった。下着も干してあって、修一はあわてて視線をそらせた。

 ステレオの上のプッシュフォンに目を留めて立ち上がった。
「電話を借りるよ。家に電話をしなくちゃね」
「どうぞ。お使い下さい」
 ダイヤルを回していると、葉子がお茶を運んできた。
「少し熱いと思います」
 小声で言い残して、ベランダに出ていった。


橋本裕 |MAILHomePage

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