橋本裕の日記
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2003年12月21日(日) ノーモア・借金

 昨日の日記「国債ブラックホール」をあるメールマガジン(no more war)に投稿したところ、メンバーの方から「なぜ借金(国債)にばかり頼るのでしょう」と訊かれた。その質問と、これにたいする回答を、今日の日記で紹介しよう。

<一般家庭に当てはめてみますと、給料が10万円で、支出が20万円。その差額の10万円が借金。こういう状態ですね。 私たちの家庭では到底考えられない。>

 とても分かりやすいたとえですね。さらに付け加えると、この家は借金を2000万円ほどかかえています。その返済が毎月4万円です。借金をしないと、月6万円で生活しなければならないことになります。

<まず私たちなら、節約して10万円で生活するように考えます。また主人の給料以外に奥さんのパートに出るとかして、収入を得る方法を考えます。なぜ借金(国債)にばかり頼るのでしょう>

 答えは、大人達が今のリッチな生活を楽しみたいからです。後の世代のことはことは何も考えようとしないで借金にふけっているのです。これはもう麻薬のようなもので、どうにもとまりません。こうしてまともな理性をうしない、思考停止状態に陥っているわけですね。

 これだけの借金をしていたのは、戦争末期の日本くらいです。戦争に負けて、国債が紙屑になり、政府は借金がきれいになくなりました。損をしたのは、直接もしくは間接的に金融機関をとおし知らないうちに国債を買わされていた国民です。歴史は繰り返すといいますが、繰り返されるのは、こうした「とんでもない愚行」です。

 以前に書いた文章を参考のために引用して、補足しておきます。書いたのが4年前ですから、データーは若干古いですが、内容は古くなっていないと思います。

<日本の累積赤字は、地方自治体の分も含めると600兆円を越えています。しかも、この額は毎年ますます膨らんでいます。たとえば99年度予算81兆円のうち、30兆円が赤字国債です。これを年収810万円のサラリーマンの家計にたとえてみると、月収68万円のうち、25万円がサラ金でまかなわれている事になります。そしてこの家庭の借金は6000万円ということになります。つまりすでに借金が6000万円もあるのに、まだこりずに毎月25万円ずつ借金をこしらえているのです。とても正気の沙汰とは思えません。

 しかし実はさらにこの話には続きがあります。実は赤字国債の他に国は建設国債を発行しています。99年度予算で言えばその額は41兆円にもなります。これは道路や橋やトンネルを作るための公共事業にあてられるので、赤字国債と違って国会で承認を受けなくても、政府は一般会計とは別枠でいくらでも発行できるのです。家計にたとえて言えば、マイホームや土地を買うためにする借金のようなものです。しかし、これも借金には違いありません。建設国債も赤字国債も実質的にはなにほどの区別がないのです。

 これらだけの国債をそれでは誰が買っているのでしょうか。それは主に日本の金融機関です。国民が郵便局や銀行に預けた金、もしくは年金や保険金として納めた金で国の借金(国債費)がまかなわれているのです。ところで国債の金利は1.3パーセントです。なぜ日本の金融資産が利息を産まないか、その理由の一端はここにあります。つまりお金が有効に活用されていないと言うことです。

 日本よりも多くの累積赤字(公的債務残高)を抱えている国はアメリカで、1100兆円(9兆ドル)もの財政赤字があります。実に日本の2倍です。このアメリカの赤字を日本が米国債を買うことで支えています。その額はアメリカの財務省の発表では40兆円ということですが、実際には300兆円から400兆円にのぼると見られています。

 アメリカは最近の好景気で税収が伸びて、一応「財政が黒字転換した」と言われています。しかし、98年度の経常赤字(貿易赤字)は2330億ドルもあります。この赤字体質が改善されないかぎり、まだまだアメリカの経済が健全だとは言えません。

 それにもかかわらずアメリカが自国の累積赤字に対して鷹揚なのには、実はそれなりの理由があるのです。それは借金の引き受け手の多くが海外の投資家だということです。米国債の金利は年率6パーセントもあります。1.3パーセントの日本の国債と違って、世界中の投資家が買ってくれます。しかしこのことによる弊害も考えなければなりません。世界中の投資家が自国の産業に投資することをやめて、その資金をアメリカに注いだらどうなるでしょうか。たしかにアメリカは発展するでしょうが、貧しい国々はいつまでも貧しいまま残されます。そしてこれは今現実に世界で生じていることなのです。

 さらにもう一つ怖ろしい事実があります。それは米国債はいつ紙屑になるか分からないということです。何しろもともとただ同然の紙屑ですから、アメリカのバブルがはじけ、株が大暴落でもしたら、米国債も紙屑です。日本がこうした紙屑を300兆から400兆も所有しているというのは考えてみれば実に恐るべき事態なのです。したがって、政府はその事実を公表しようとしません。

 ところで財政赤字を国内総生産(GDP)で比較すると、日本は600兆円に対して500兆円ということになり、その割合は120パーセントに達します。この値はいまやイタリアを抜いて世界一です。92年の段階ではこの値は60パーセント以下で、イタリアの半分以下、アメリカよりも小さかったのです。それがこの8年間の放漫財政によって見る間に2倍以上に膨れ上がってしまい、しかも今も天井知らずで上昇を続けています。>

なぜ借金をするのか。それは私たちが身分不相応なリッチな生活をしたいからだ、と書きました。たしかにその通りなのですが、これではまだ、分析が甘いと言われそうです。そこで、もう少し、ほんとうのところを補足しておきます。

 戦争中に天井知らずの国債を発行したのは、軍費調達のためです。それではなぜ戦争をしたのか。いろいろな説がありますが、私が注目しているのは、軍隊の巨大化があると思います。戦争のために軍隊があるのではなく、軍隊のために戦争がある。つまりえらい軍人さん達をいっぱい作るために戦争がおこり、国民がその惨禍にまきこまれていったのです。

 今日の巨額な赤字国債も、実はおなじ構造で発生しています。戦前は軍隊でしたが、今日それにかわるのは官僚と政治家です。この強固な利権構造が、巨大な赤字国債を生み出しています。この点をしっかり認識しておく必要があるでしょうね。

(参考)「橋本裕の経済学入門」
http://home.owari.ne.jp/~fukuzawa/zin4-1.htm


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