橋本裕の日記
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| 2003年12月20日(土) |
国債というブラックホール |
質量の大きな星は、やがて自分自身の強い重力のために内部崩壊し、ブラックホールという暗黒物質をつくる。アインシュタインの理論によれば、この暗黒物質の近くでは重力がきわめて大きいので、光さえも蟻地獄のようにその穴に落ちていく。あらゆるものが吸い込まれ、その穴の質量はさらに大きくなる。ブラックホールは光を出さないが、質量が大きいので、周囲の物体に与える影響も大きく、間接的に観測されるわけだ。
たとえばハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、私たちの銀河の中心付近には、アンドロメダ座のM32、おとめ座のM87などの巨大なブラックホールがごろごろあるらしい。これらのあるものは、太陽質量の26億倍というからすごい。他の銀河でも、たとえば銀河M106に太陽質量の3600万倍の巨大ブラックホールが観測されている。
ブラックホールは宇宙の物質の究極的な吸込口であり、どんなものもそこから出ることはできない。ガスや星を飲み込んで質量を増やし、大きくなることしかできない。こんな厄介なものが、この宇宙に存在している。そして最後は、宇宙そのものが、一つの巨大なブラックホールに呑み込まれてしまうのではないか。これは現に科学者がアインシュタインの理論によって世界の終末を描くときのシナリオの一つである。
ところで、来年度の国家予算が内示された。それによると、歳出は82兆円で、これを42兆円の税収と40兆円近い国債の発行で賄うのだという。今年度が36兆円だから、さらに国債の発行額がふえるわけだ。国と地方合わせれば、累積発行額は750兆円を超えることになりそうである。ちなみに平成14年度当初予算は81兆円。支出の内訳を書いておく。
1.社会保障 18兆円(23%) 2.地方交付税交付金 17兆円(21%) 3.国債費 17兆円(21%) 4.公共工事 8兆円(10%) 5.文教、科学振興 7兆円( 8%) 6.防衛関係 5兆円( 6%)
国債の償還や利払いにあてられる国債費が17兆円もある。比率は21%で、財政支出の5分の1を借金の返済と利払いにあてている。収入の半分を借金にたより、その借金でどうにか借金の利子を払っているわけだ。今後この比率がますます高くなり、財政をさらに硬直化させることが予想される。
国債を発行し、公共事業などにお金を使えば、景気対策になるという人がいるが、問題は国債を買うのが誰かということだ。じつは日本の国債の95%は日本の投資家によって買われている。つまり私たちが年金や貯金として預けたお金が、国債に吸い取られ、肝心の産業に廻らないのだ。
資金がどんどん国債というブラックホールに吸収され、ブラックホールだけが巨大になっていく。宇宙がブラックホールに呑み込まれるように、日本経済は借金というブラックホールにすっかりこれに呑み込まれてしまうだろう。ちなみに政府債務残高のGDP比を、1991年と現在で比べてみよう。ブラックホールの異常な成長ぶりがわかる。まずは1991年の統計を書く。
イタリア(120パーセント) アメリカ(70パーセント) 日本(65パーセント) フランス、ドイツ(40パーセント)
ところが、2002年には、日本がアメリカやイタリアを抜いて、ダントツの世界一になる。世界開発機構による統計を書いておこう。
日本(155.7パーセント) イタリア(120.1パーセント) フランス(69.6パーセント) アメリカ、ドイツ(65パーセント)
日本の国債依存性は突出している。この十数年間、他の国々は「財政再建」を旗印に適正で効率的な支出により経済を立て直してきたのに、日本はそうではなく、景気浮揚という名目でただただ国債とその利権に巣くう天下り官僚機構というブラックホールばかり肥え太らせてきたわけだ。すでに巨大化したブラックホールの引力圏を脱出するのは不可能になりつつある。この先、何が起こるか? 年金の破綻ぐらいですめばよいのだが・・・・
ところで、1974年に、スティーブン・ホーキングは一般相対性理論と量子力学を組み合わせて、独自の理論を作った。この理論によると、ブラックホールは、明るく輝いたり、縮んだり、ときには大爆発したりすることがあるという。ブラックホールが爆発するというホーキングのこの予言は、世界の科学者に大きなショックを与えた。国債というブラックホールも、いつか大爆発をするのかもしれない。
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