橋本裕の日記
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2003年11月18日(火) アイドルの素顔

 中学生の頃、とてもかわいい同級生がいて、ひそかに憧れていた。私のクラスには、後にミス・日本代表になるきれいな女の子もいたが、他にも何人かの美少女がいた。山田詠美の「ぼくは勉強ができない」を読んでいて、そうした美少女のことを思いだした。

<彼女たちは、たいてい清潔感にあふれていて、愛らしい顔をしている。自分の魅力に気付いていないわ、というような初心な表情を浮かべながら、磨きたてたうなじを何かの拍子に、ちらりと見せたりする。手を抜いていないなあ。ぼくは、彼女たちを見るたびに、そう心の中で呟く>

 主人公の時田秀美のクラスにも山野愛子というとびきりの美少女がいて、友人の川久保など、「いいなあ、山野さん、ああいう子が彼女だったら、おれ、何でも言うこと聞いちゃうよ」と溜息ばかりついている。そしてある日、秀美に、恋のキューピット役を依頼する。ところで、その川久保の様子だが、こんな具合なのだ。

<彼の髪の毛は、ムースで綺麗に立てられ、彼の気合いの入れようを物語っていた。しかし、その髪の立ち方は、あまりにも、やる気をみなぎらせていて、ぼくは滑稽に見えた。手を抜かないというのは、そのやる気を隠す段階まで進むことだ。ぼくは、川久保が山野愛子に、追い付いていないのを感じた>

 成算がない。とても愛子との交際は無理だというのを、川久保がどうしても自分の気持を伝えてくれというので、秀美はしかたなく、愛子をよびだす。川久保の気持を伝えると、愛子はあっさり、川久保との交際は断って、そのあと、「時田くんて、意地悪だと思う」と意外なことを言う。

<山野愛子は、睫毛を伏せて唇を噛んだ。ずい分、長い睫毛だなあ、とぼくは、その下に出来た影を見て思った。確かに彼女は美少女だ。それは認める。しかし、その下で噛まれた唇に演技があるとぼくは感じた。白い小さな歯は、計算されたように唇を押している。媚びているんじゃないか、こいつ。ぼくは途端に不愉快になった>

<山野は、伏せていた睫毛をゆっくりと上げた。それと同時に、足許にあった彼女の視線が、ぼくの体の上を移動してきた。彼女の瞳が、ぼくのそれをとらえた時、ぼくは驚いて目を見張った。彼女の睫毛は、涙で縁取られていたのだ>

 このあと秀美は、愛子に「好きだ」と、愛の告白を受ける。これを拒否すると、美少女が変身する。お互いに本音をぶつけ合うやりとりはなかなか圧巻である。明日の日記で紹介しよう。


橋本裕 |MAILHomePage

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