橋本裕の日記
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2003年11月04日(火) 水槽の中の世界

 最近、居間に水槽をおいて、メダカやタニシを飼っている。メダカを飼いたいと言い出したのは妻で、私が妻の提案に乗り、小さな水槽を買った。それから二人でタモをもって涸れかけた田圃の水路を歩き回った。まるで二人とも幼い頃にもどったようなはしゃぎようだった。最初はメダカ救出作戦のつもりだったが、水槽でメダカが泳ぐ姿をみていると、他にも魚を飼ってみたくなった。

 岐阜県の美山町に円原川という長良川の源流の一つがある。そこにタキノボリというハゼ科の魚がいたのを思い出して、取りにいったりもした。もっともこの魚、ネットで調べてみると、「フィッシュ・イーター」と書いてあり、よくみると獰猛な顔をしている。メダカが食べられたりしたら大変なので、またもとの川まで返しに行った。

 妻がカワエビが欲しいというので、長良川へも行った。たまたま舟を上がりかけた漁師のような風体のおじさんがいたので、「この辺にカワエビはいませんか」と声をかけると、「いないことはないが、夜しか姿をあらわさない」とのこと。「家に何匹かいるので、分けて上げよう」という。

 ついていくと、物置のようなところにたくさんの水槽が並んでいて、ライトアップされたなかに、いろいろな魚が泳いでいる。そのなかから、白メダカを7匹ほど掬って、カワエビと一緒にくれた。この白メダカはかなり貴重品らしく、後日水槽を買った店に行くと、一匹400円ほどで売られていた。3000円近くのものをただで貰ったわけだ。ほかにセンバラがいて、これも欲しかったが、そこまでは言い出せなかった。

 カワエビはネットで調べると、「テナガエビ」という種類らしい。これは店でも売っていなかった。細くて長い手を伸ばして水槽を動き回る姿がなんともユーモラスで見ていてあきなかった。

 白メダカは現在5匹ほどが元気に泳いでいる。二匹死んだが、これはどうも夜のうちにカワエビに食べられたらしい。他のメダカも何匹か死んでいて、中には胴体が半分食べられたものもあった。そこでせっかく貰ったカワエビも長良川に返してやることにした。一つの水槽にメダカと一緒に肉食のエビを飼うことは、どうもむつかしいようだ。

 ヨシノボリやテナガエビがいなくなって少し淋しくなったので、妻と娘がこんどはドジョウをさがしに出かけたが、「田圃を掘り返してみたけどいなかった」と言って帰ってきた。行きつけのラーメン屋のオヤジに訊くと、「オタマジャクシがカエルになるころに田圃に行くとたくさんいるよ。今は姿を見かけないね」とのこと。

 ショップへ行くと、ドジョウが一匹200円ほどで売られていたが、これは買わずに、かわりにヒメメダカを5匹と、カワフグを一匹買ってきた。さらにヌマエビとマリモを買った。これらがライトアップされた水槽の水草の間を元気に泳いでいる。循環器が作る滝の水音を聞きながら、これらの小さな生き物の姿を見ていると、さわやかな気分になって癒される。これもまたお金には換算できない小さなしあわせだ。

 サマーセット・モームは「デカルトを読んでいると、透明な水の中を泳いでいる感じがする」と書いているが、水槽の魚たちを見ながら、私はモームのこの言葉を思い出した。水槽の中の生き物たちは、なんと明晰な生き方をしていることかと、少しうらやましくなった。


橋本裕 |MAILHomePage

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